第4回「熾烈を極める特許紛争!サムスン VS アップルの最新情報」
配信日2011年7月24日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
第3回のメルマガでは、サムスンVSアップルの特許紛争を時系列順に取り上げて、その後、具体的な訴訟関連ニュースを紹介した。第4回はその続きであるが、いくつかの最新ニュースも届いているので追加しておく。まずは記事のチャートを見て欲しい。
記事のチャート
アップル、韓国でサムスンを提訴→弁解準備手続きで舌戦→アップル、マルチタッチに関する特許を獲得→サムスンが米国ITCにアップルの特許侵害と輸入禁止を要請→サムスンが逆提訴を取り下げ→最新情報
アップル、韓国でサムスンを提訴
>Appleはサムスンに対し、韓国で特許関連の訴訟を提起した。Bloombergが報じている。 同報道によると、Appleは現地時間6月22日、ソウル中央地方裁判所に訴状を提出したという。Appleの主張の詳細は公開されていないため、今回の 訴訟が全く新しいものなのか、それとも同社がサムスンを相手取って起こした以前の訴訟に関連するものなのかは不明だ。<
(韓国経済、アップル、特許めぐり韓国でサムスンを提訴)
ここに来て、アップルとサムスン側が争っている特許の中身が明らかになる。
Apple:AllThingsDに対して、「サムスンの最新製品群がハードウェアの形状からユーザーインターフェース、さらにはパッケージングに至るまで『iPhone』と『iPad』に酷似しているのは、決して偶然ではない。
サムスン:Appleが通信技術のHSPAおよびWCDMAに関するサムスンの特許を侵害したと主張。
ここで注目なのは、どちらも特許侵害を訴えているが、アップルは主にデザイン面で、サムスンの方は通信技術だということ。つまり、双方、同じ土台で争っていないわけだ。
一般人からすれば、アップルの主張は簡単に受け入れることができる。しかし、サムスンの通信技術に対する特許侵害というのは非常にわかりにくいのではないだろうか。
*HSPA:NTTドコモなどが採用している第3世代(3G)携帯電話方式「W-CDMA」のデータ通信を高速化した規格。3G方式の改良版であることから「3.5G」とも呼ばれ、従来の5倍以上の通信速度を実現する。
説明を見ても、どんな特許なのかがわからない。そのために、サムスン側の訴えについては、肯定も否定もできないのだ。アップル側の方は、前回に主張したとおり、サムスンがパクっていることは言うまでもない。
そうして、いよいよ弁解準備手続きが始まる。
弁解準備手続きで舌戦
>サムスン弁護士「200ページ以上にわたって説明したのに、これ以上何を説明しろというのか」
アップル弁護士「量が多いだけで、中身がない」
サムスン弁護士「だからといって、わずか8ページの答弁書を送ってくるのか」<
弁解手続き準備の舌打戦の一幕だが、サムスンとアップルの違いが良くでている。アップルは簡潔な文章を送り、サムスンは冗漫な文章を提出した。8ページと 200ページ。実際、200ページもあるサムスン側の答弁書は、読むに堪えないのがこのやり取りから容易に想像できる。しかし、実はこれだけではない。
>サムスン電子の代理人を務める弁護士法人「広場」の権寧模(クォン・ヨンモ)弁護士がこう質問すると、 アップル社の代理人を務める「キム&チャン法律事務所」の梁英俊(ヤン・ヨンジュン)弁護士は 「サムスン電子が送付した150ページの訴状と80ページの準備書面を精読しても、 一体何を要求しているのか説明がなかったからだ」と反論した。<
つまり、合計230ページ読んでも、要求していることの説明すらないという。何を要求するかなど1ページで十分だと思うのだが…。さらに両者の主張はこうだ。
サムスン:アップル社のスマートフォン(多機能携帯電話端末)やタブレットPC(タッチパネル式の表示・入 力部を持つ携帯可能なパソコン)は全て、サムスンの標準特許4件と技能特許1件を無断で使用し、特許権を侵害したもの。直ちに特許権を侵害する行為を中止 し、現在市販されている全ての製品を回収して廃棄することを求めた。
アップル:サムスンの特許が標準特許として認められたという事実は確認されておらず、 たとえ標準特許だとしても、FRANDライセンス(技術標準に含まれる特許権者が、非特許権者に対し、 合理的・非差別的にライセンスを付与する)があるため、問題にはならない。
以上。このような両者の主張が繰り返されていく。そして6月30日、サムスンが米国ITCにアップルの特許侵害の輸入禁止を要請するのだが、もう一つ、その前に重要なニュースがある。
アップル、マルチタッチに関する特許を獲得
>最初に申請を行ってから3年以上を経て、Appleがようやく「iPhone」のタッチスクリーンに関する特許承認を得た。タッチスクリーン式のスマートフォン市場で、Appleが独占的な立場をさらに強める可能性がある。
米国特許第7966578号 によると、Appleは、「タッチスクリーン・ディスプレイを備えるポータブル多機能デバイスと連動して使用するための、フレーム・コンテンツを含むページ・コンテンツの表示技術に関するコンピュータ実装方法」について使用権を認められたという。<
(アップル、マルチタッチに関する特許を獲得――申請から3年を経て)*リンクが文字化けして張れなかった。手間になるが検索から飛んでみて欲しい。 )
ここに来て、アップルが申請していたタッチスクリーンに関する特許承認を得た。もちろん、これに恐怖することになるのはサ ムスンだけではないのだが、こうなってくると、アップルはこの特許を「ライセンス契約」で他社に使用を認めていくのではないか。要するに特許料を払えとい うことだ。
非常にタッチスクリーン使用に対する幅広い特許なので、今後、どうするかは注目だ。もちろん、この特許訴訟にも影響するだろう。では、先ほど少し触れたサムスンの要請を見て欲しい。
サムスンが米国ITCにアップルの特許侵害の輸入禁止を要請
>三星電子(005930)が米国国際貿易委員会(ITC)にアップルを特許侵害疑惑で提訴し、 該当製品の輸入禁止を要請したとブルームバーグ通信が29日(現地時間)報道した。通信によれば、三星電子は前日ITCに提出した訴状でアップルのアイ フォン、アイポッド、アイパッドが自社の特許5件を侵害したと主張した。<
さて、この具体的な特許が次のようになる。
>三星が侵害されたと明らかにした特許は無線ネットワークを通したマルチプルサービス伝送方式、高速データ 伝送に使われるデータパケットフォーマット、電話機にウェブブラウザを統合する技術、デジタルオーディオの保存と再生方式、タッチスクリーンを利用してデ ジタル文書を見ることなどだ。<
(韓国経済、サムスンが米国ITCにアップルの特許侵害と輸入禁止を要請! )
サムスン側が要求した通信技術に関しては何ともいえないが、タッチスクリーンを利用した技術は、すでに特許が認められているので、ITCが問題にする可能性は低いといえる。
さて、このように米国ITCを巻き込み、ますます過熱していく特許訴訟なのだが、ここに来てサムスンが逆提訴を取り下げてきた。
サムスンが逆提訴を取り下げ
7月2日(ブルームバーグ):韓国のサムスン電子は、米アップルによる特許侵害を主張する米連邦裁判所への 訴えを取り下げた。サムスンのスマートフォン(多機能携帯電話)「ギャラクシー」などが特許侵害に当たるとしてアップルが起こした訴訟に対抗し、サムスン も4月に逆提訴していた。
(韓国経済、サムスン電子がアップルに対する逆提訴を取り下げ!)
サムスン電子は、この取り下げは訴訟のスリム化のためと述べているのだが、実際のところ、負けるのがわかって取り下げたという見方もある。
さて、ここまでがメルマガの本来の範囲だった。しかし、この2週間で二つの気になるニュースが出てきたので、最後に取り上げておこう。
最新情報
>米アップル製の高機能携帯電話(スマートフォン)「iPhone(アイフォーン)」による位置情報の無断収集問題で、プライバシー侵害に対する慰謝料支払いを求める集団訴訟が、大きな関心を呼んでいる。
(韓国経済、慰謝料を求めての対アップル集団訴訟に参加希望者が殺到 サイトがつながりにくくなるほど )
直接、同社の訴訟に関連性はないが、これがアップルの韓国撤退フラグになる可能性はある。さらに次の記事を見て欲しい。
>関係筋によると、世界最大の半導体受託生産会社である台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW) は、米アップルAPPL.Oの次世代チップA6チップの試験的生産を開始した。アップルは現在サムスン電子(005930.KS)に委託しているチップ生 産を他のメーカーに変える可能性がある。
現在アップルは「iPad 2」に搭載されているA5チップの生産をサムスン電子にのみに委託している。ただ、スマートフォン市場で最大のライバルであり、特許関連訴訟で争っているサムスンとは今後距離を置く可能性がある、とみられている<
(韓国経済、台湾TSMC、米アップルの次世代チップの試験的生産を開始=関係筋)
このようにサムスンとアップルの特許紛争をめぐり、両者の対立はますます深刻化している。その状況が、今後の部品メーカーにとっては非常に気になる問題と なるわけだ。iPhoneは1億台。iPadは2千万台の販売台数。これだけでも凄いのに、関連商品などを入れれば市場はさらに広がる。
サムスンとアップルを巡る特許訴訟関連は、またニュースがたまり次第、やっていこうと考えている。では、第5回の予定を紹介する。
次回は「韓国の家計債務と消費者物価」を何回かに分けて、取り上げていくつもりだ。韓国経済にとって、家計債務と消費者物価の話題はこれからは避けては通れない重要な事項。韓国の家計債務と消費者物価の現状をまとめていく。
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