第16回「米韓FTAの実態と12の毒素条項」

第16回「米韓FTAの実態と12の毒素条項」

配信日:2011年10月23日

最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)

週間韓国経済、第16回目のメルマガは13日にアメリカで承認された米韓FTAを特集する。すでに第11回目のメルマガで欧州のFTAについては取り上げて、韓国のメリットとデメリットを解説した。その続きの内容になるので、FTAを軽くおさらいをしておこう。

>自由貿易協定という言葉の通り、FTA(Free Trade Agreementは2国間以上で結ぶ国際協定。平たく言えば経済上の優遇策。主な内容は、物品の関税、その他の制限的な通商規則、サービス貿易等の障壁など、通商上の障壁をなくすことがあげられる。一番わかりやすいのは物品の関税撤廃だろう。

世界中のどの国でも、大抵は自国産品を保護するために、輸入には高い関税を敷いている。外国から安い商品が大量に入ってくれば、国産の商品が売れなくなるからだ。例えば、日本に入って来る米の関税率は778%となっている。

このような高い関税率で日本の米を安い外国産の米から守っているわけだ。TPP議論などが日本では関東・東北大震災前では盛んに行われていたのだが、高い関税が撤廃されてしまえば、日本の農家が苦しくなるのは見ての通りだ。<

このようにFTAとは、二国間の貿易障壁を撤回(関税)して、自由な貿易を促進することにある。そのため、その分野の競争力が負けていれば、一方的にその分野で負けてしまう。

貿易というのは多角化しているので、例え、農業で負けても、電気製品などの売上が伸びれば、結果的にはプラスになるのではないかというのが韓国の考えだ。良いか悪いかはともかく、こうしたFTA政策そのものを締結するのは悪いことではない。

問題その内容だ。これが幕末の不平等条約を連想させるような内容だったりする。米韓FTAで公開されている条件を詳しく見ていこう。では記事のチャートを貼る。今回は米韓FTAと最近の韓国経済ニュースの2部構成となっている。

記事のチャート

第1部

米韓FTAの条件→毒素条項→毒素条項はデマなのか?→韓国最大野党が米韓FTAに反対、見直しを求める。

第2部

今週の韓国経済ニュース→今週の韓国市場

米韓FTAの条件

韓国の新聞で書かれていた米韓FTAの条件は次の通り。これだけ見ても、アメリカ有利な条件となっている。

排気量により最長3年間で乗用車関税を撤廃するとしていた旧協定文を修正

関税撤廃期間を最長5年まで延長しようという米国側要求を受け入れる
米国産豚肉輸入関税撤廃期限2014年→2016年まで延長

・乗用車+電気自動車
米国側は韓国産乗用車に適用される関税2.5%を4年間維持した後撤廃
韓国側は米国産乗用車に適用される関税8%を発効直ちに4%へ引き下げ
残り4%は4年後(5年目に)撤廃することにした。

・貨物自動車
10年間で関税(25%)を撤廃
8年目(発効後7年後)までは関税を維持
その後二年で関税を撤廃することにした。

・自動車に限定された相互主義セーフガードを導入に両国が合意
セーフガードは関税撤廃後10年間適用可能
発動期間は最長4年
回数に対する制限はない
セーフガード発動後2年間報復を禁止

・韓国内基準でなく米国側安全基準を適用する対象
従来のメーカー別6500台→2万5000台に拡大
この基準は米国内で生産された自動車にだけ適用されることにした。

・自動車燃費基準
年間4500台(2009年販売基準)以下のメーカーに対しては19%緩和された基準を適用  (基準はリッター17km)

・自動車部品(韓国→アメリカ)の関税
4%→FTA発動後は0%

・撥ねた要件

大型中小型車両ごとの個別消費税
自動車税課税種別および自動車公債買い入れ負担引き下げ要求

農畜産物と医薬品部門

米国政府

米国産豚肉(冷凍肉、首まわりの肉、骨なしカルビなど)の関税撤廃時期
2014年→2016年で2年延長

医薬品分野:複製医薬品市販許可と関連した許可・特許連係の履行

18ヶ月→36ヶ月間延長

韓国企業のアメリカ国内支社での勤労者に対するビザ(L-1)有効期間を延長

支社新規創設時 1年→5年
既存支社勤務時 3年→5年

韓国の新聞に実際取り上げられた米韓FTAの内容はこうなっている。これだけでも十分不利な条約だが、もっと酷いのが毒素条項といわれている翻訳されていない条項だ。

毒素条項10条

1)サービス市場開放のNegative list:

サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。

(2)Ratchet条項:

一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。

(3)Future most-favored-nation treatment:

未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。

(4)Snap-back:

自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。

(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement。

韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。

(6)Non-Violation Complaint:

米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例 えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性が ある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。

(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。

(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用

例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなく なる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制 限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。

(9)知的財産権を米が直接規制

例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。

韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1~2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から 見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSで あっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。

(10)公企業の民営化

以上になっている。

毒素条項はデマなのか?

さて、毒素条項についてはインターネットの間ではデマではないのかという疑いがもたれており、あまりにも不平等な内容なので、最初は管理人も信じてはいなかった。あくまでも噂程度だったのだが、それについて、毒素条項がデマではないソースがもたされた。

原文入力:2011/10/13 16:09(657字)


米国議会が韓米自由貿易協定(FTA)履行法案を13日最終承認したことによりハンナラ党も国内国会批准手続きをゴリ押しする態勢だ。

これに伴い、インターネットとツイッターなどでは民主労働党が作った<韓米FTA 毒素条項 12種 完ぺき整理>という文書ファイルが話題になっている。

この文書は1.ラチェット条項 2.金融および資本市場の完全開放 3.知的財産権直接規制条項 4.スナップバック条項 5.サービス市場のネガティブ方式開放 6.未来最恵国待遇条項 7.投資家-国家提訴権(ISD) 8.非違反提訴 9.政府の立証責任 10.間接受け入れによる損失補償 11.サービス非設立権認定 12.公企業完全民営化&外国人所有持分制限撤廃からなっている。

例えば1.ratchet条項の場合、ratchetは一方向だけに回転し反対方向には回転できない歯車をいう。 一度開放された水準はいかなる場合にも取り返しがつかないという条項だが、先進国および産業国家間のFTAでは類例を見ない毒素条項だ。例えばコメ開放で 国内のコメ農作業が全廃され食糧が武器化される状況になっても以前に戻すことはできない。

ハンギョレ・サランバン : 韓米FTA, 毒素条項 12種

このように韓国のハンギョレ・サランバンの日本語訳サイトで毒素条項が韓国のインターネットやtwitterで話題になっていることを取り上げている。内容を確認してみると、確かに毒素条項にうり二つであるし、さらに二個追加されている。

さらに韓国政府は米韓FTA推進に積極的だが、韓国の国会や野党代表は反対している。二つの記事を紹介しよう。

韓国最大野党が米韓FTAに反対、見直しを求める。

【ソウル聯合ニュース】韓国最大野党、民主党の孫鶴圭(ソン・ハクキュ)代表は14日、米国議会で実施法案が可決された韓米自由貿易協定(FTA)について、あらためて交渉のやり直しを求める意向を示した。

同日、国会で開かれた党最高委員会議で孫代表は、「韓国は米国の従属国ではない。米国が批准したからといって、(韓国は)付和雷同し急いで議会批准する必要はない」と述べた。

韓国経済、韓米FTAの再交渉を要求=韓国最大野党代表

>韓米自由貿易協定(FTA)が実際に発効するためには、韓国は国会でFTA批准同意案以外の14のFTA関連法案を可決しなければならない。米国のオバマ大統領が3日に提出した韓米FTA実施法案は、その名称が示す通りFTAを実行に移すための法律だ。

上下院で採決が終わると、オバマ大統領が署名をするだけで、それ以外には新たな法律の制定や改正なしに、全ての準備 が終了する。 しかし韓国側の事情は異なる。国会が韓米FTAの発効前に処理すべきFTA関連の法律は23あり、うち公認会計士法や税務士(税理士)法など九つの法律は すでに改正された。

しかし商標法、個別消費税法、FTA関税特例法など14の法律はまだ採決さえ行われていない。もし野党が最後まで韓米FTAに反対した場合、国会外交通商委員会だけでなく別の常任委員会でも反対の動きが表面化し、状況がさらに混迷することも考えられる。

韓国経済、韓米FTA、批准案の通過だけでは効力なし

韓国の最大野党が反対し、なんとか批准案通過だけで押しとどめている。このような状況からして、FTAの毒素条項が確実なデマだとは考えにくいし、ラチェット条項は、管理人が少し翻訳した米韓FTA(英文)にも出てくる。

アメリカがそんな酷いことをしないと思った方もいるかもしれないが、アメリカにはスーパー301条なども過去にある ので、そのような条件をつけないと限らない。また、韓国が知的財産を守らない国、コピー大国だという事実も存在する。当然、裁判になることだってアメリカ は考えているだろう。

このように、米韓FTAは韓国にとんでもない不利な条件を付加している。これでウィンウィンの関係などありはしない が、こうした抵抗もあるために、韓国で本当に承認されて、法案が整備されるかはまだわからない。しかも、韓国では次の大統領選が近づいて来ている。野党は 攻勢を強めていくことだろう。

最後にオバマ大統領が米韓FTAで素晴らしいコメントしているので紹介しておこう。

>バラク・オバマ米国大統領は14日(現地時間)、米国を国賓訪問中の李明博(イ・ミョンバク)大統領と米国自動車 産業の心臓部、ミシガン州デトロイトのGM工場を訪問し、韓米自由貿易協定(FTA)を言及して、「韓国は米国に売った分だけ買う。これが均衡貿易」と強 調した。

韓国経済、オバマ大統領、「韓国、米国に売った分だけ買うのが均衡貿易」)

第2部

今週の韓国経済ニュース

先週の韓国F1GPは楽しんで頂けただろうか。その後の展開を少しだけ紹介しよう。一年前と何も変わってないという ドイツ紙の酷評を速報で伝えたが、それの続きとなる。管理人はUstreamでレースを観戦していたのだが、レース中の司会者の話では韓国F1GPのサー キットが開けられたのは3日前だった。つまり、一年前からまったく使われていなかったのだ。

これでサーキット建設費4000億ウォンを払えるのか、毎年10%上がる、テレビ放映権料、FIAの開催権料などを どうするのか。明らかに水増しした入場者数で16万人だが、実際チケット収入は19億円。そうしたことで、レースが終わった後で、もう開催危機のニュース が流れた。

>韓国GPのオーガナイザーは、同グランプリが財政的に苦しい状況にあることを認め、今後も開催を継続するためにバーニー・エクレストンの助けを借りたいと語った。
韓国GPは2016年までの開催契約を結んでいるものの、財政的に行き詰まっており、来季の開催もできないのではとのうわさが流れている。 レースプロモーターのパク・ウォンハは、韓国GPが財政的に苦しい状態であることを認め、巨額の開催料金が原因のひとつであるとして、エクレストンと交渉 したいと述べた。

地元メディアによれば、今年のグランプリにかかった費用は5,200万ポンド(約62億7,000万円)で、そのうち3,500万ポンド(約42億円)が開催およびテレビ放映の料金だという。

さらに2016年までの契約の中で、開催権料は10パーセント上がるということだ。 チケット収入は約1,600万ポンド(約19億円)だったとみられており、韓国GPは政府からの支援を受けられなければ巨額な損失を抱えることになる。<

韓国経済、韓国GP、大幅赤字と不人気で開催継続の危機か)

以上。これにサーキットの建設費、周辺の道路環境の整備など加えれば、どうやっても赤字にしかならない。しかも、韓国人はモータースポーツにはほとんど興味がない。

>先月の韓国の貿易収支が15億ドルの黒字を達成 し、20カ月連続で黒字となった。16日に関税庁が発表した「9月の輸出入動向」によると、先月の輸出は468億ドル、輸入は453億ドルで、昨年の同じ 月に比べそれぞれ18.8%と29.3%増加した。8月に4億ドルにとどまった貿易黒字は再度2けたに上り、2000年2月からの黒字基調を維持した。だ が、黒字規模は昨年9月の44億ドルの半分にも満たなかった。<

韓国経済、9月の貿易黒字15億ドル、20カ月連続で黒字

9月の貿易黒字は15億ドルとなったが、明らかに絶好調だと述べて韓国経済の勢いはない。それを象徴するのがこの ニュースだ。また、LGディスプレーが過去最高の赤字を出している。サムスンはスマートフォン市場でアップルを抜き世界一位となったそうだが、アップルと の訴訟で勝てるとは到底思えない。賠償金は増えるばかりだ。

そうしたニュースもあるのだが、今週、最も重要なニュースがこれだ。

>日韓両国は19日の首脳会談で、韓国銀行(中央銀行)との間で結んでいる外貨融通協定(スワップ協定)の限度額を現在の5倍強の700億ドル(約5兆4000億円)まで拡大することで合意した。

韓国では欧州債務危機に端を発した世界的な金融市場の混乱で通貨ウォンが急落し、ドルなどの外貨不足が懸念されている。日韓両国は今後の緊急時の備えとして融通枠を拡充し、東アジアの金融為替市場の安定強化を目指す。

外貨融通、700億ドルに拡大=為替安定へ規模5倍に-日韓首脳合意

この通貨スワップについて用語の詳しい解説、日本側のメリット、デメリットなどを次週のメルマガで詳しく取り上げる予定だ。通貨スワップのメリットはあっても、大幅に増額するのに日本側のメリットはあまり感じられない。

今週の韓国市場

     KOSPI   ウォン   KOSDAQ  外国人(単位はウォン)

17日  1865.18  1140.2  485.38   2511億
18日  1838.90  1145.3  483.43    -1813億
19日  1855.92  1132.6  488.17   -260億←通貨スワップ増額
20日  1805.09  1145.1  469.98   -1043億
21日  1838.38  1147.4  481.22   -2543億

このように19日に通貨スワップ増額して、確かにウォン高には一時期的になったが、その2日後と外国人売買動向は、 明らかに売り越しなのだ。この動きにはまだまだ注意が必要だろう。むしろ、管理人には通貨スワップ増額は、禿に外貨準備高の不足情報を確実視させてしまっ た印象すら与えてしまった。

以上。今週はこれで終わりだが、来週は先ほど少し触れたとおり、通貨スワップについて解説していくので、楽しみにして欲しい。

ご購読に感謝する。これからも応援のほどを宜しくお願いする。

 

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