第21回「急激な円高と日本の震災によって加速する韓国製自動車部品の調達」

第21回「急激な円高と日本の震災によって加速する韓国製自動車部品の調達」

配信日:2011年12月04日

最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)

今週のメルマガは韓国製の自動車部品にスポットを当てて、その近況などを紹介しようと思うのだが、その前に震災によって明らかになった日本の自動車企業の 構造の問題点をトヨタのジャスト・イン・タイム生産システムを例にあげて紹介する。このシステムのどこに脆弱性があるかを説明した後なら、韓国製部品の調 達が加速している理由がわかるだろう。では、記事チャート貼っていく。

記事チャート

ジャスト・イン・タイム生産システム→各日本企業の自動車輸入(韓国製)部品調達→今週の市場

ジャスト・イン・タイム生産システム

製造業にとって、重要な経営要素になるのが在庫管理である。造りすぎても、材料の保管に経費がかさむ。特にトヨタの場合は製品が車なので、保管しておく場所代の出費は非常に痛い。しかも、何百と自動車部品があるわけで、部品を造りすぎても保管するのにコストがかかる。

反対に在庫がないと商品の注文が来ても、顧客の対応に間に合わない。車を注文しても、納品が1ヶ月とかになれば、他の車に顧客が移ってしまうわけだ。

そこで考え出されたのが、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」調達、生産、供給することを基本コンセプトとした生産システムである。これをジャスト・イン・タイム生産システム(JIT)という。

このジャスト・イン・タイム生産システムを可能にしているのは、強固なサプライチェーン(供給者から消費者までの流れを管理すること)であり、トヨタはこ れを徹底させている。途中部品のことを半製品、仕掛品というのだが、車の場合は何百もある工程作業のなかで、どの半製品、または仕掛品がどれだけ必要かを コンピューターで管理する。

そして、いつ足りなくなるかを予想して、前の工程に注文を出していく。このように出来るだけ在庫を出さないように製品の製造を行うことで、コスト削減が大幅に可能となるわけだ。

徹底した無駄、コスト削減を使い、トヨタは輸出を拡大してきた。一見、非常に合理的なジャスト・イン・タイム生産システムだが、実は大きな弱点がある。それは、大量注文が来ると間に合わなくなることだ。

また、不良品が発生したり、工場機械の故障などが起きた場合、仕掛品の在庫が少なければ、安定した供給を行えなくなることがある。それに急いでまとまった数が欲しいという顧客の要望にも答えにくい。

この弱点が、今回の関東・東北地方で起きた大地震と津波によって大きく問題となった。東北にある部品工場が壊滅して、部品が足りなく生産ができなくなるという事態となったわけだ。たった一つの部品が足りなくて生産ができなくなると、そこで全ての工程が止まってしまう。

想定外の地震であっても、企業の生産が大幅に落ち込んでしまったことで、経営者はこのジャスト・イン・タイム生産システムの見直しが図られることになる。その一貫として、他国への生産拠点、調達先の分散化が求められるようになった。円高の影響ももちろんあるだろう。

こうした事情は日本の東北地方が世界中の企業の自動車部品を引き受けていたことに他ならない。そのため、東北が壊滅したことで、日本の輸出企業は代替え部品を日本以外に求めていくことになる。それが韓国製の部品供給が加速している主な要因となっている。

このような理由もあって、韓国製の部品が日本車に使われることが増えてきた。そこで、次は代表的な各企業の輸入部品がどれぐらい使われてるかを調べた。

ホンダの場合(2010年5月19日 日刊工業新聞)

>ホンダは2013年にも生産を始める次期「フィット」の国内モデルの輸入部品比率を40%に高める。現状は17%程度。

フィットは世界で年50万台を販売するホンダの主力モデル。輸入部品の採用拡大などにより、次期フィットでは15%程度の原価改善を目指しており、コスト削減幅は全体で700億―800億円規模に達する見込みだ。<

【自動車】ホンダ、次期「フィット」の輸入部品比率を4割に[10/05/19]

このように部品比率を海外に高めていくのだが、問題がないわけではない。このフィットだって実は3年で20万台リコールされている。2011年9月6日の読売新聞から。

>ホンダは5日、乗用車「フィット」20万3777台(2005年10月~07年10月製造)について、運転席ドアのパワーウインドースイッチの構造などに問題があり、操作を繰り返すとスイッチから発火する恐れがあるとして、国土交通省にリコールを届け出た。

同省によると、08年2月以降、煙が出るなどの不具合が254件発生。うち7件は、スイッチ周辺が燃える火災となり、運転手ら計2人が手にやけどを負った。 

 

タイにある同社現地法人も5日、日本で販売された「フィットアリア」(05年10月~08年8月製造)1万2416 台について、同様のトラブルが起きる恐れがあるとしてリコールを届け出た。同省によると、海外で販売された計約72万台に同じスイッチ部品が使われている といい、ホンダは各国の法律に基づき対応する。<
ホンダ、フィット20万台リコール…火災7件 : ニュース : @CARS : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

ダイハツの場合(2011年9月21日)

>ダイハツ工業の伊奈功一社長は、新型車『ミライース』に中国や韓国のサプライヤーから部品を調達したことを明らかにした。

同社が中国や韓国のサプライヤーから一時調達部品の供給を受けるのは初めて新型車イースは最廉価グレードが80万円を切る低価格で、徹底したコスト低減に新興市場のサプライヤーが貢献している。

同社は「良い部品なら世界中から調達する」オープン&フェアな考え方に沿った調達改革に乗り出している。この一環で、中国や韓国のサプライヤーから高品質 で低コストな部品を調達する。円高が定着している中で、中国や韓国のサプライヤーから部品を調達することで、為替リスクを分散する狙いもある。

ただ、新型イースの部品調達先が約300社なのに対して、中国や韓国のサプライヤーは数社にとどまる。伊奈社長は「上海に事務所も設けた。今後も良いものなら、(新興国からも)積極的に調達して為替に影響されない体制を構築していく」と述べた。<

【ダイハツ イース 発表】中国と韓国の部品を初めて採用 | レスポンス (ニューモデル、新型車のニュース)

ダイハツは韓国製、中国製の部品を使うのを結構躊躇っているのがわかるが、このようにダイハツでさえ、韓国製の部品を調達している。

トヨタ・日産の場合(2010年9月18日14時33分 読売新聞)

トヨタ自動車、日産自動車など国内自動車大手が、割安な韓国製部品の
本格調達に乗り出すことが18日、分かった。

韓国・ソウルで今月29日から開かれる見本市に参加し、韓国の大手部品
メーカーと商談会を行う。国内自動車大手は円高で国際的な競争力が低下しており韓国から部品を輸入して製造コストを引き下げる。今後、部品の海外調達各社に広がれば、自動車メーカーを支えてきた国内の系列部品会社が打撃受ける恐れもある。

見本市は日韓政府の主催による「日韓部品素材調達展示商談会」で、日本自動車工業会の協力で自動車メーカー約10社が参加する。商談会は今年で2回目だが、昨年は電機大手などが中心で、自動車メーカーが参加するのは今回が初めてとなる。

【経済】トヨタ・日産、韓国製部品を本格調達へ 国内企業を見殺しか

これは1年前のニュースではあるが、為替の影響と地震によるリスク管理を考えれば、数年でさらに増えている可能性がある。日産の部品で気になるニュースがある。

>日産九州、部品の9割を中韓などで調達(2011年9月20日)

日産自動車は20日、九州工場を分社し、10月1日に事業を始める新会社
「日産自動車九州」(福岡県苅田町)でアジアや九州からの部品調達率を
現状の7割から最大9割に早期に引き上げる方針を明らかにした。(途中省略)

日産九州の半径50キロメートル圏内には1次部品メーカーが47社集積するほか、九州一帯には約1000社の自動車関連企業がある。さらに韓国までは約 200キロ、中国・上海までは約1100キロと東京とほぼ同距離に位置する。

同社長は「アジアとの協業を進めるのが新会社の狙い」と強調する。導入時期や商品概要は明らかにしていないが、新たに小型車を生産する方針も示した。日産 九州の生産車種は多目的スポーツ車(SUV)やミニバンなど中・大型車が中心。2012年以降に米国に生産移管する小型SUV「ローグ」の代わりにすると みられる。

 日産自動車、部品の9割を韓国などから調達 

またなぜか経済産業も後押ししている。これは2011年10月24日の日刊工業新聞から。

>経済産業省とトヨタ自動車、日産自動車、ホンダなど自動車メーカー11社は、11月1日と2日にソウルで 調達商談会を開き、韓国企業からの部品調達を図る。韓国の知識経済部(部は日本の省に相当)が主催する展示商談会「素材部品未来ビジョン2020」に合わ せ、日本の経産省が専用ブースを設置。自動車メーカーが調達戦略を構築する手がかりにするとともに、10月19日の日韓首脳会談で合意した、日韓経済連携 協定(EPA)の早期交渉再開に向けた機運を盛り上げる。

自動車メーカー11社が、納入を希望する韓国企業からの商談に応じる。商談予定件数は100件程度。円高・ウォン安の中で、韓国自動車部品業界の状況を把握する。

日韓両政府が協力することで、日韓EPA交渉再開に向けて経済交流の実績を積み上げる狙いもある。

自動車メーカー11社、韓国から調達-経産省、商談会で後押し:日刊工業新聞

三菱自動車の場合 2010年12月29日朝日新聞

>自動車大手が、価格が安い韓国製部品の採用を拡大し始めた。国内では安価な軽自動車の販売が増え、新興国向けの「100万円以下カー」を相次いで発表。自動車の低価格化が進んでいるためだ。

品質が向上し、ウォン安で割安になった韓国製部品。日本の部品メーカーの競争相手になるのか。国内の自動車大手のなかでも、韓国製の部品調達に積極的なのが三菱自動車だ。(途中省略)

三菱自は、韓国製を含む海外部品調達を、今年度は1600億円と、前年度の1100億円から大幅に伸ばす計画。資材費の2割を海外部品が占めることになる。

韓国側も「品質に厳しい日本で認められれば、世界のどこでも通用する」(部品メーカー)と、売り込みに躍起だ。韓国からの自動車部品の輸出は現代自動車の海外生産の拡大もあって増加傾向だが、日本向けはまだ部品輸出額全体の3%程度にとどまる。<

asahi.com(朝日新聞社):自動車部品へ韓国勢の波 低価格売り、大手メーカー採用 – ビジネス・経済 (1/2ページ)

調べて見たわかったが、このように日本製の車に韓国製の自動車部品が採用されるケースが増えている。特に今回の震災による、トヨタの合理的と思われていた ジャスト・イン・タイム生産システムでは、震災のような大災害が起きれば対応出来ないことも明るみになったり、ずっと続く円高によって、企業は中長期戦略 を見直すことになった。そのため、こうしたニュースがいくつも出てくるようになった。

今週の韓国市場

今週は、欧州危機対策により、韓国市場は一気に復活した。さらに、アメリカの最大消費イベント、クリスマス、年末商戦が始まり、ダウがその影響もあって爆上げ。韓国のウォンは高くなり、株価は1900台を回復した。

まさに爆上げな状況となったわけなのだが、これも韓国が原因というわけではなく、アメリカ、欧州の影響で株価やウォンが上昇していただけとなる。このニュースは非常に重要なニュースなんで全文掲載しておく。

>11月30日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)など世界の主要6中央銀行は30日、欧州ソブリン債危機への国際的協調対応の一環として、市中銀行への緊急ドル資金供給の金利を引き下げると発表した.

主要国中銀が金融市場の緊張緩和を目指す協調策を打ち出したことで世界の株式相場は急伸。商品相場が大幅上昇したほ か、欧州の大部分の国債利回りも低下した。欧州の救済基金の支援能力が当初予定していた規模に届かないことが明らかになって広がった不安が和らぎ、3年ぶ りの高水準にあった欧州の銀行のドル資金調達コストも下げに転じた。

RBSセキュリティーズの米国担当シニアエコノミスト、ミシェル・ジラード 氏は協調策について、「支えにはなるが、必ずしも形勢を逆転させるものではない」と述べ、投資家が政策担当者の協調を心強く思うという意味で、「影響は何よりも心理的なものだ」と指摘した。

 FRBの30日の発表によると、銀行が中銀から翌日物でドル資金を調達する際に支払う市場金利への上乗せ分は50ベーシスポイント(bp)引き下げられ50bpとなる。
 
FRBに欧州中央銀行(ECB)とカナダ銀行、スイス国立銀行、日本銀行、イングランド銀行(英中央銀行)を加えた6中銀は、「市場環境によって正当化さ れる」ことを条件にいずれの通貨でも資金供給を可能にする暫定的な二国間スワップ協定の締結でも合意した。これらのスワップ協定は2013年2月1日まで 有効となる。
 
ドル資金を融通するスワップ協定は当初12年8月1日に失効することになっていたが、6カ月間延長される。新金利は12月5日から適用する。
 

 

日銀の白川方明総裁は30日夜会見し、「国際金融市場が緊張度を高めていることに対応した」と述べ、各国中銀が協調して行動することが「市場の安心感」につながると強調した。<

FRBなど主要6中銀、ドル供給金利引き下げで協調-欧州危機対応(1 – Bloomberg

11月28日~12月2日までの市場

日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 外国人

28日 1815.28 1154.3 486.36 -1978億←クリスマス、年末商戦、
29日 1856.52 1145.4 492.73 3789億
30日 1847.51 1143.0 492.81 932億
01日 1916.18 1126.1 496.33 6282億←欧州危機対策
02日 1916.04 1131.5 498.33 -1089億←効果は一日だけ?

以上。今週は日本の自動車に採用される韓国製の自動車部品にスポットを当ててきた。次回は何を特集していこうか考え たのだが、韓国の「携帯、スマートフォン」についてやっていこうと思う。日本でもサムスン製のギャラクシーSがDoCoMoから発売されているし、アップ ルとの特許訴訟もある。

韓国経済の今後を見る上でも、重要なジャンルとなっている。どんな記事になるかは楽しみにしておいて欲しい。

 

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