28回「イランへの経済制裁で、韓国の原油動向は危機に陥るのか」
配信日:2012年1月29日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週のメルマガは韓国の原油動向について特集していく。既にご存じの人も多いと思うが、昨年の11月30日に起きたイランでのイギリス大使館襲撃事件にお いて、イギリス、その同盟国であるアメリカが、イランへの経済制裁を強く呼びかけている。具体的にはイランからの原油を購入するなという命令ではないが、 それに近いレベルの勧告といえる。
その中に、我が国も含まれるわけだが、韓国だって、イランに原油輸入を頼っている国だ。そのため、韓国はいくらアメリカの命令とはいえ、安価で売ってもらっていた原油を買わないようにするのは難しいと、最初はそう述べていた。
しかし、アメリカ様には米韓FTAの件でもわかるように逆らこともできず、段階的にイランへの輸入量を減らしていくという対策をすることになる。対するイ ランは、これ以上の経済制裁を行えば、アメリカにホルムズ海峡を封鎖すると警告している。また、アメリカの最新鋭の無人偵察機が、イラン領土内に不法侵入 して、イラン軍に回収された事実も付け加えておく。
ここまで事前知識とまず知っておいて欲しい。さて、このメルマガは韓国経済に関することを特集するのが主旨なので、イランにおける核疑惑問題という非常に 政治的な話題は避けるつもりだ。しかし、後で、少しコラム的なもので管理人のスタンスを補足しておきたい。では、記事のチャートを貼る。
記事のチャート
イランへの輸入割合と価格→原油価格輸入の影響を最も受けやすい国は韓国→イランへ輸出している企業400社が打撃を受ける怖れ→2011年のイランからの原油輸入量は20%増加→ガソリン価格→今週の韓国市場動向→コラム「イランへの経済制裁について」
イランへの輸入割合と価格
【ソウル聯合ニュース】韓国が輸入している原油のうち、主要輸入国ではイラン産の価格が最も安いことが25日、分かった。
韓国石油公社が運用するインターネットサイトによると、昨年1~11月に韓国が原油を輸入した国はイランを含め23カ国・地域で、輸入量は8億4659万トンに上る。
価格はイラン産が1バレル当たり平均102.89ドルと4番目に安かったが、イランより安かったのはコロンビア(同96.22ドル)など輸入量の少ない 国・地域。イラン産が韓国の原油輸入の9.76%(国・地域別で4位)を占めるのに対し、イランより安い3国・地域の割合は計0.53%にすぎない。<
(韓国経済、制裁なら痛手 イラン産原油輸入価格は最低級 )
これは1月25日の聯合ニュースからなんだが、イラン産価格が最も安いことと、原油輸入の割合が9.76%だということがわかった。だいたい1割ほどだ。そして、もう一つ重要なことがある。それは韓国は原油輸入価格で最も影響が受けやすい国だということだ。
原油価格輸入の影響を最も受けやすい国は韓国
>韓国は「原油価格の影響を最も受けやすい国」というデータがある。IMFのチャートなのだが、原油高騰で影響を受けやすい国のランク付けがしてある。ランキングを紹介してみよう。
1位は韓国で、2位はトルコ、3位はギリシャ、4位はアイルランドとなっており、日本はどこかというと、日本は10位となっている。しかも、このチャート を見ると、韓国は2位のトルコと倍近く離れて-10%近くとなっている。日本がー0.5%程度だと比べて見ても、韓国の原油価格高騰の影響で深夜の消灯令 が出されるのも無理はないように思える。<
以上。引用したのは管理人が書いたコラムなんだが、この時はリビア情勢の影響において、深夜の消灯例が出されたときだった。今回はイランへの経済制裁が引き金で、原油価格の高騰が懸念される。では、実際、どの程度の企業が被害を受けるかを見ておこう。
イランに輸出している企業400社が打撃を受ける怖れ
>【ソウル聯合ニュース】韓国の洪錫禹(ホン・ソクウ)知識経済部長官は18日、大韓商工会議所が主催した朝食懇談会に出席し、イラン制裁問題に関連して「イラン向け輸出が完全に禁止されないよう米国と緊密に協調する」と話した。
洪長官は、イランに輸出している韓国企業2300社、特にイランへの輸出額が全体の50%を超える企業400社が打撃を受ける恐れがあると述べた。<
(韓国経済、イラン向け輸出全面禁止を阻止=韓国知識経済部長官| )
これは1月18日の聯合ニュースから。このように韓国にとってイランへの経済制裁に加担することは企業400社を犠牲にすることになる。もう一つ最新ニュースがある。
2011年のイランからの原油輸入量は20%増加
>韓国が、「イラン産原油の輸入縮小に向けたアメリカの圧力をよそに、2011年、韓国のイランからの原油輸入量は20%増加した」と語っています。韓国 国営石油会社は、25日水曜、「2011年、韓国のイラン産原油の輸入量は、前年と比べて20%増加し、日量19万8918バレルから、23万8860バ レルに達した」と発表しました。
韓国の一部の製油所は、2012年にイランからの原油輸入を拡大するための計画について指摘しています。韓国は、世界第5位の原油輸入国であり、2011年の10月までに、自国の石油需要の9.6%をイランから輸入しました。
こうした中、アメリカは、イランからの原油輸入を縮小させるため、韓国政府への圧力を増しています。<
この記事はまだブログには載せてないのだが、昨年の韓国はイランからの原油輸入は20%ほど増加していたことがわかった。さらに追加すると、韓国の昨年の 原油輸入価格は1000億ドル(7兆6949億円)を超えている。昨年のエジプト、リビアなどの中東情勢による原油高の影響である。昨年比の46.6%と いうのだから相当なものだ。
もちろん、企業だけではなく、こうなってくると庶民のガソリンも高騰する。最後はガソリン価格を見ておこう。
ガソリン価格
>韓国石油公社が運営する油価情報サイト「オピネット」によると、19日現在、ガソリンスタンドの一般ガソリン販売価格は1リットル当たり1964.31ウォンで、5日の1933.30ウォンから15日連続で値上がりしている。
20日、ソウル汝矣島(ヨイド)の国会議事堂前にあるガソリンスタンドでは、一般ガソリン価格が1リットル=2345ウォン(約160円)と表示されている。<
これは1月21日の中央日報からだが、決して、イランから原油輸入減少が企業だけでの問題ではないことがわかる。このように庶民もガソリン価格が上昇することで影響を受ける。
結論だけを述べると、これだけで韓国の原油動向は危機的な状況に陥ることは少ないだろう。UAEやオマーンなどの中東国家が、イランに何かあったときは優先して韓国に原油を回してくれるというニュースがあるからだ。
ただ、庶民の生活を圧迫する可能性は非常に高い。ガソリン価格だけではなく、原油価格は様々な商品の値段をつり上げる。しばらくは様子見だが、この先もイラン情勢は油断ならない。
今週の韓国市場動向
今週の韓国経済は韓国の旧暦の関係で市場が3日間開いてなかった。市場が開いたのは25日から。その中で先週に続いて外国人の買いが目立っている。また、一方で機関と個人がずっと投げ売りしていることにも注目したい。
KOSPIのポイントは2000台を回復出来るか。ウォンは1100ウォンを超えられるかが一種の目安となる。ただ、大統領選挙が4月にあるので、株価は 上げてくると予想はできる。ウォンのほうは悪材料がない限り、この範囲のレートを行ったり来たりするだろう。韓国にとっては、過度なウォン安もウォン高も 懸念材料にしかならない。
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 外国人(ウォン)
25日 1952.23 1125.9 511.47 9339億
26日 1957.18 1122.0 516.45 4487億
27日 1964.83 1123.2 515.81 4570億
コラム「イランへの経済制裁について」
ただ、管理人のスタンスとしては、核拡散防止条約への違和感は拭えない。自分たちだけ核を持って外交を有利にする先進国のやり方は明らかに公平とはいえな い。我が国においても、イランは親日国であるし、アメリカがどう言おうが貴重な中東のパイプだ。日本にとってこれを失ってしまうのは非常にもったいない。
日本にいるとイスラムのことを快く思ってない言動はたくさん見られるし、間違った解釈もたくさんある。これはある調査でもわかっていることだ。911か ら、イスラム原理主義だけをクローズアップして恐怖の対象にするのは、世界三大宗教となっているイスラムのことをほとんど何も理解していないことと変わり はない。
イスラムにおける宗教倫理は非常に素晴らしいものがあるし、明治維新の日本だって、イスラムの研究は盛んな時があった。そして、日本にも10万人ほどのイスラムの人々がいる。
知らないから怖いイメージというものがあるが、実際、イスラムとキリスト教を比べれば、イスラムの方が非常にまともな宗教だということがわかる。こんなこといえば、キリスト教信者に怒られるかもしれないが、例を上げると、イスラムでは利子を取ることを禁止している。
私たちはグレーゾーンを利用して、法外な利子をとって、日本人を苦しめてきた消費者金融を知っている。(日本ではその辺りが関連が見直されたので、消費者 金融が以前のようにCMをいくらでも出すようなことはなくなった。しかし、韓国に渡って、その消費者金融がぼろ儲けしていることは以前のメルマガで触れた 通り)
これだけ見てもイスラムの教えが悪いとは思えない。どの宗教にも過激派というものが存在する。イスラムを信仰している人々(ムスリム人口)は世界で16億人もいるのだ。様々な考えがあっても不思議ではない。
コラムが長くなったが、この先、イスラム世界は注目されていく。パレスチナ問題、宗教観対立、核開発問題、原油を巡る争いなど、火種はいくらでもある。
以上。今回はコラム付きということもあり、かなりのボリュームになったが、最新動向はまとめられたと思う。さて、次回のメルマガ予告だが、最近、何かとサ ムスンについてのニュースが出ている。1回、もしくは2回にわたって、今のサムスンの現状を分析したいと思う。日本企業にとってもサムスンは巨大な会社で ある。
サムスングループだけで、韓国のGDP25%も稼ぎだしている。サムスン電子だけで15%である。これを知って疑問に思わない人はまずいないだろう。明らかにこの数字はおかしいのだ。そうしたことも踏まえての最新動向を届けるつもりだ。では、楽しみにして欲しい。
読者様の購読に深く感謝する。これからも応援のほどを宜しくお願い致します。
追記:この記事を書いて配信の準備をしてから気付いたわけだが、29日は第5日曜日となってしまい、本来ならメルマガは休みの予定だったようだ。ただお正 月も休ませて頂いたので、今回は号外扱いとして出しておく。
また市場動向についても見ている読者様もおられるので、来週まで休むと最新動向はチェックでき ないということになる。少しでもこのメルマガが役に立てるなら管理人としても本望なので、今回はそういったことを踏まえて1月29日に配信している。ご理 解頂きたい。