第31回「米韓FTAは廃棄可能なのか?韓国の野党がオバマ大統領に公開書簡を送る」

第31回「米韓FTAは廃棄可能なのか?韓国の野党がオバマ大統領に公開書簡を送る」

配信日:2012年2月19日

最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)

今週の韓国経済は「米韓FTA」を特集する。すでにメルマガ第11回、第16回でFTA、米韓FTAの問題点について紹介した。今回はその16回以降の動きを米韓FTAの単独採決からまとめておく。

すでに、タイトル「米韓FTAは廃棄可能なのか?」からして、経済を国際政治や経済を知っている人にとって「あり得ない」と思ってしまうのではないだろう か。もちろん、アメリカと韓国はこのFTA締結に向けた交渉を何年も行ってきた。それを本格的に始まる前に韓国側が一方的に廃棄するという話だ。

ただ、手続き上なら廃棄可能とだけ最初に述べておく。では、記事のチャートを貼る。

記事のチャート

米韓FTA単独採決→韓国国会「米とのFTA再交渉を」→オバマ大統領、米韓FTAの成果を強調→米韓FTAは大統領の一言で廃棄可能→韓国の野党がオバマ大統領に公開書簡を送る→アメリカ、公開書簡の対応を慎重に検討→米韓FTA、総選挙で最大の争点に→今週の韓国経済


与党、わずか4分で単独採決

>午後4時6分、民主労働党の金先東(キム・ソンドン)議員が催涙弾を破裂させたため、本会議の開始は4時 24分にずれ込み、その4分後に批准同意案が採決された。これに対し、20人余りの民主党議員が議長席をたたきながら、鄭義和(チョン・ウィファ)国会副 議長に対し「FTAの強行採決反対」などと叫んで抗議した。

イ・ジョンゴル議員は「この売国奴め」と罵声を浴びせ、朴仙淑(パク・ソンスク)議員は「ハンナラ党議員たちはやくざ者だ」と非難した。だが、野党議員らは議長席を占拠したり、議事棒(小槌)を奪い取ったりといった強硬手段には出なかった。<

韓国経済、韓米FTA:与党、わずか4分で単独採決

この記事は2011年の11月23日の朝鮮日報から。

催涙弾を投げて、米韓FTA採決を阻止しようとした野党。だが、気になる点が次の文章にある。野党議員は強硬手段には出なかったところだ。この時点でも う、韓国野党は米韓FTAを選挙対策に利用しようとしていた思惑が読み取れる。この前の時点で、米韓FTAに反対するデモ抗議がいくつか起きていたことも 関係あるだろう。

つまり、米韓FTAに表立って反対して、止めようとしたとアピールしても、ここで本当に止める気はなかった。選挙期間中に米韓FTA反対と述べる方が民衆 の支持を得られると考えた。そして、野党は米韓FTAでの国民感情を煽りながら、大規模デモ、反対集会を指導していくようになる。

韓国国会「米とのFTA再交渉を」

>韓国国会は30日、米国と自由貿易協定(FTA)の再交渉をするよう政府に求める決議を賛成多数で可決した。韓国国会はすでにFTAの批准を与党主導で承認しているが、根強い世論の反発を背景に、再考を求める異例の決議を余儀なくされた。

与党ハンナラ党議員の一部も賛成した。決議は特に、韓国側の政策で損害を受けたと主張する米企業が、韓国政府を相手取って賠償を求めることができるとする条項について「主権を脅かしかねない」と指摘。破棄も含めて米国と再交渉するよう求めている。

決議には強制力がないため、FTA発効の障害にはならない。だが、4月の総選挙、12月の大統領選に向けて、野党側は「米韓FTAを含む通商政策の全面見 直し」を争点にする構えだ。FTAを推進してきた李明博(イ・ミョンバク)政権に対し、「恩恵を受けたのは一部の大企業」との反発が特に若者層で強い。最 大で数万人規模の反対集会も続いている。<

asahi.com(朝日新聞社):韓国国会「米とのFTA再交渉を」 承認後、異例の決議 – 国際

これが2011年12月31日の朝日新聞の記事。大晦日で、もうすぐ年明けという忙しい時間だが、韓国の野党が米韓FTAを選挙対策に使いながら、支持を集めていることが書いてある。

オバマ大統領、一般教書演説で米韓FTAの成果を強調

オバマ米大統領は24日夜(日本時間25日午前)、上下両院合同会議で行った一般教書演説で、雇用創出と輸出拡大に向けた主な成果の一つとして韓米自由貿易協定(FTA)締結を挙げた。

オバマ大統領は米経済回復に向けた道筋を示しながら、国内での雇用創出を強調。また、米企業が海外に製品を販売しやすい環境をつくっていると説明した。

韓国経済、オバマ大統領、一般教書演説で米韓FTAの成果を強調 日本への言及は無し

これが2012年1月25日の聯合ニュースから。オバマ大統領が、一般教書演説で、米韓FTAの締結の成果をあげた。アメリカにとって、これがどれだけ有利な交渉だったかが手に取るようにわかる。

米韓FTAは大統領の一言で廃棄可能

>韓米自由貿易協定(FTA)は、今年12月19日の第18代大統領選挙の結果によっては、早ければ来年8月にも廃棄される可能性がある。

韓米FTA協定文には「この協定は、どちらか一方の当事国が他方の当事国に協定の終了を希望することを書面で通知した日から180日後に終了する」と規定されている。<

韓国経済、韓米FTA:大統領の一言で廃棄可能 大統領選の結果によっては来年8月に廃棄される可能性)

これは2月4日の朝鮮日報から。そんな簡単に廃棄することができるのかと思ったわけだが、確かに英語ソースに当たるとこのように書いてある。

>Now, what the people, the 99 percent, should do is stop the deal entering into force. But if the deal goes into effect next year as planned by both governments, the people must turn over the political power structure in the coming general election and the presidential election next year and terminate the agreement.

Technically, termination of the deal is very simple. According to Article 24.5(2), the agreement shall terminate 180 days after the date either party notifies the other party that it wishes to terminate the agreement. <

(http://www.koreaherald.com/opinion/Detail.jsp?newsMLId=20111128000371)

(今、99%の人々が、なすべきことは契約(米韓FTA)の発効停止です。しかし、両方の政府が計画通りに契約が来年施行されれば、人々は、総選挙と大統領選挙による、来年の政治権力構造の裏返しに契約を終了する必要があります。

技術的には、契約の終了は非常に簡単です。第24.5(2)によると、契約は、当事者のどちらかがそれは契約を解除したがっている相手方に通知日後180日を終了しなければならない。)

以上。管理人が英語のソースに当たって調べたのを日本語訳したものだが、確かに米韓FTA廃棄は、技術的には非常に簡単だと書いてあることが確認出来た。だから、最初に手続き上は可能だと述べたわけだ。

だが、実際はどうなのか?まだ、正式に始まってもいない米韓FTAがすぐに廃棄されるとしたら、誰がそのような米韓FTAを使おうと思うのだろうか。普通は誰も使わない。また長年の交渉がまったく無駄になるというのもある。そして、いよいよタイトルに繋がる。

韓国の野党がオバマ大統領に公開書簡を送る

>韓国野党の民主統合党が「執権すれば韓米自由貿易協定(FTA)を廃棄する」という書簡をオバマ大統領など米国指導部に送ったことに対し、元・現職外交 官が懸念を表している。友好国や同盟国の間で締結した協定を廃棄すると一方的に通報するのは、外交関係では「戦争をしよう」という意味と変わらない敵対行 為、という指摘だ。

【社説】度が過ぎる野党の韓米FTA破棄公開書簡 | Joongang Ilbo | 中央日報

これが2012年2月9日の中央日報の社説だ。社説で述べている通り、まさに米韓FTAを一方的に廃棄するという公開書簡を送ったことは、戦争をしよう、 敵対行為になると指摘している。管理人も色々と外交というものをニュースで見てきたが、まさに前代未聞だった。どう見ても戦争行為にしか見えない。では、 これに対してのアメリカ側の回答を見ておこう。

アメリカ、公開書簡の対応を慎重に検討

>「米国は韓国とお互い利益になる自由貿易協定(FTA)を発効させるために最善を尽くしている」。

民主統合党など韓国の野党が「政権交代後に韓米FTAを廃棄する」という書簡をオバマ米大統領と上・下院議長に送ったことに関して意見を聞くと、米通商代 表部(USTR)が8日(現地時間)中央日報に短く答弁を送ってきた。的外れな回答のようだが、韓国野党のFTA攻勢を眺める米国政府の慎重な姿勢が見え る。<

韓国経済、「FTA発効のために最善」…韓国野党の公開書簡に米国が慎重な反応

さすがにアメリカ側の困惑が見て取れる。世界最大国家であるアメリカに、アメリカなら三日もあれば占領できそうな韓国の野党が、一方的な米韓FTA廃棄宣言をしてきた。国際常識を知らない韓国しか出来ない。むしろ、しない方法だが、そんなものが受け入れられるはずはない。

そして、全ては次の記事に集約される。

米韓FTA、総選挙で最大の争点に

>与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)非 常対策委員長が、「執権後に韓米自由貿易協定(FTA)破棄」を宣言した野党に対し、「必ず責任を問わなければならない」と話した。また「与党だった時は 国益のために韓米FTAを推進するといっておきながら野党になったら正反対の主張をし、今度は選挙で勝てばFTAを破棄するという人たちに国を任せること はできない」とも述べた。

13日に非常対策委員会全体会議と全国委員会に相次いで参加した席でのこと。野党が韓米FTAを野党陣営結集の名分と同時に総選挙の争点として浮上させたことに朴委員長が真っ向から対立したものだ。

党刷新に注力してきた朴委員長がこの日1日だけで2度にわたり野党を攻撃したのは異例だ。これで韓米FTAは与野党ともに退くことはできない総選挙の争点に浮び上がった。<

韓米FTA、韓国総選挙で最大の争点に | Joongang Ilbo | 中央日報

これが2月14日に出された記事だが、あの時の単独採決から満を持して、ついに米韓FTAの対応が、4月に行われる韓国総選挙で最大の争点となった。そう全てはこの時のため。野党の思惑がここに成功したといえる。

これが最新の動向である。この後、少し記事は続くが、もう次なる流れは十分想定できるだろう。米韓FTA廃棄をめぐり議論を加速させ、与党を追い込んで行く。4月の選挙までにはもう一度ぐらいは特集したいところだが、おそらくその流れは変わらない。

今週の韓国経済

日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 外国人(ウォン)

13日 2005.74 1121.9 533.19 1616億
14日 2002.64 1123.9 535.36 1383億
15日 2025.32 1121.5 537.86 2421億
16日 1997.45 1131.9 535.30 -705億
17日 2023.47 1125.6 540.14 -2589億

以上。今週も株高、ウォン高という傾向が続いている。欧州危機のギリシャ救済が上手くいきそうな見通しから、日経も上昇していたので、韓国も釣られて上がったことになる。

特にサムスン電子、ハイニックスの半導体の株価が上昇していたことは気になる。実際、日本の東芝やエルピーダメモリは、厳しい状態である。エルピーダが国に支援されるのかはまだわからない。

これで、今週のメルマガは終わるわけだが、かなり充実した内容になったと思われる。単独採決から、米韓FTAが総選挙の最大争点になるまでの流れが掴めたと思われる。

さて、来週のメルマガの予定だが、韓国の総選挙における最大の不安材料を取り上げたいと思う。ズバリ、韓国の大統領が逮捕されるのかという話だ。韓国の大統領が任期を終えて、安らかに死んだ者は一人もいない。

そして、大統領の近くに起きている様々な疑惑が選挙前に報道されるようになった。経済と少し離れるが、選挙前に知っておいた方が良いと思われるので特集していく。

ご購読に深く感謝する。これからも応援のほどを宜しくお願い致します。
 

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