第33回「54兆ドルのCDSが資本主義を終わらせる?欧州危機の最大の危険性は、銀行の連鎖倒産(システミック・リスク」

第33回「54兆ドルのCDSが資本主義を終わらせる?欧州危機の最大の危険性は、銀行の連鎖倒産(システミック・リスク

配信日:2012年3月4日

最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)

今週のメルマガはCDSについて解説する。既にタイトルからして、韓国経済の範囲を遙かに超えているのだが、欧州危機の最大の危険性とは、CDS契約によって銀行が連鎖倒産する可能性だ。

なぜ、ギリシャがここまで救済されるのかはここにある。ギリシャ国債を最も保有しているのは、フランスとドイツなのだ。では、記事のチャートを張る。

記事のチャート

ギリシャ国債でデフォルト→CDSとは→CDS・プレミアム→今週の韓国経済

ギリシャ国債でデフォルト

>3月1日(ブルームバーグ):欧州各国の政府が保有するギリシャ国債が今年デフォルト(債務不履行)状態に陥るかもしれないと、ピーターソン国際経済研究所のジェイコブ・カークガード研究員が1日指摘した。

ギリシャの債務スワップ正式案が先週示され、民間債権者が保有するギリシャ国債の元本53.5%削減が決まった。同研究員はブルームバーグラジオとのイン タビューで、欧州中央銀行(ECB)がスワップ合意に伴う直接的な損失を被らない一方で、各国政府が保有するギリシャ国債に対しこうした評価損を適用する のが政治的にやりやすいと述べた。

カークガード研究員は「重要なことはこれは政治問題だということだ。順序付けが極めて大事だ」と語った上で、「本質的に1国の政府による他国の納税者に対するデフォルトということになる」と付け加えた。

国際スワップデリバティブ協会(ISDA)の判定委員会は同日、ギリシャ国債を保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の決済を引き起こす信 用事由は発生していないとの判断を下したが、同研究員はこれがCDS利用に向けた投資家の意欲を損ねる可能性があると述べた。<

欧州各国保有ギリシャ国債でデフォルトか-カークガード氏 – Bloomberg

最後の文にCDSがでてきている。抜き出して見よう。

>ギリシャ国債を保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の決済を引き起こす信用事由は発生していないとの判断を下した

ギリシャがデフォルトすれば、CDSの決済を引き起こす。どこの経済記事にも、大抵CDSの話題が出ているだろう。では、CDSを説明しよう。

CDSとは

CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とは、貸付債権や社債の信用リスクを売買するオプション取引のことをいう。この説明だけでわかれば、相当、経済通だと思うのだが、管理人もわからない。簡単な例を出そう。

1億円の負債があったA企業が倒産するとしよう。

この企業に1億を貸していたAという銀行は当然、そのお金をなんとか回収したいわけだ。しかし、お金がなくて倒産したのだから、普通は回収できない。このままでは銀行は貸し付け損になってしまう。

そこで、銀行はこのリスクを避けるために、CDS契約をする。CDS契約には「買い手」と「売り手」の2種類が登場する。

CDSの買い手は一定の契約料を支払うことで、債務不履行や、経営破綻などのクレジットイベントが起きた場合にのみ、金利や元本に相当するお金を受けとることになる権利(オプション)を売り手から買い取る。

この条件で、もし、A企業が倒産すれば、この企業にお金を貸していた銀行は、CDSの売り手に金利や元本を支払うことになるわけだ。

何だ、銀行は損しているのではないかと思うかも知れない。だが、銀行はCDS契約をしたときある一定の契約料を手に入れている。仮に、1000万の契約料だとすれば、実際の損失は9000万円の損害になるわけだ。

そう考えれば、CDS契約を結ぶことで銀行はリスク回避をしていることになる。CDSには「債務保証」の役割もあるといえるだろう。しかし、これはCDSの一つの側面にしか過ぎない。

問題はここからだ。CDSは金融の債権・債務のリスクとは無関係に、権利(オプション)だけを売買する。債務不履行が起こると、債権・債務の有無に関係なくCDS契約に基づく支払いが成立する。

これは誰でも良いのだ。契約料を支払い、その権利を売買するのは何も銀行だけではない。自由に取引できるため、市場が成立している。つまり、投機的商品なのだ。

「これはどこどこの企業CDSですよ。契約料は5000万です。誰も良いから購入して下さい。倒産した場合は、この企業に貸した10億円をお支払いします」

このように売られているわけだ。そして、CDSの市場の想定元本額は、驚くことなかれ。2008年末で54兆ドル(5500兆円)なのだ。

世界的な投資家で有名なウォーレン・ヴァレット氏はCDSを「金融大量破壊兵器」と呼んでいる。そして、リーマン・ブラザーズ以降、CDSはもう一つ「核に匹敵するボタン」だともいわれている。

なぜアメリカ政府がリーマン・ブラザーズを潰して、同規模の米国最大保険会社「AIG」を助けたかもCDSにあると考えられている。AIGはCDSに 4410億ドル投資していた。破綻していれば、CDSの爆弾は世界中に多大な影響をばらまいており、今、こうして管理人がメルマガを書いているかどうかす らわからなかった。

管理人がつけたタイトルが決して、誇張ではないことがだんだんわかってきたのではないだろうか。資本主義が終わるかも知れないのだ。

一番難しいのはあまりにも市場が拡大しすぎて、どの企業や銀行、投資家がどれだけCDS契約をしているのかが全体像が把握しにくいことだ。もはや、CDS市場は一人歩きしているといっていい。

話をギリシャに戻そう。つまり、ギリシャがデフォルトすることになって、CDS決済の信用事由に該当すれば、フランスやドイツの銀行はそのCDSの買い手に多額の元本を支払うことになる。

フランス・ドイツ銀行はそんな莫大な金を用意できるはずもない。

もし、フランス・ドイツの銀行が破産すれば、今度はフランス・ドイツ銀行のCDS契約していた銀行や投資家が、CDSの買い手となっている別のどこかに元 本を支払う必要が出てくる。そうすれば、また別の銀行が破産するという、恐ろしいシステミック・リスクを発生させることになる。

この連鎖倒産を防ぐには、ギリシャをデフォルトさせて、フランスやドイツの銀行に、CDSの買い手に元本を払える巨大な資金を供給するか。それとも、ギリシャそのものを維持させるのか、どちらしかないわけだ。そして、今、やっているのがギリシャをいかすことだ。

CDS・プレミアム

これは以前のメルマガで説明した裏格付けといわれているものだ。これについても少し説明しよう。WIKIから単純化した図式を持ってきた。

d(1-r)=s(1-d)

s:1年間のCDSプレミアム、 d:1年デフォルト確率、 r:デフォルトした際の回収率

このような式を単純化したのが各国のCDSプレミアムということになる。例えば、2011年9月のギリシャのCDSプレミアムは3950bpである。誰が 見てもデフォルトしているプレミアム数値なのだが、先ほど説明した事情で、潰せないわけだ。そして、最近、ギリシャに13兆円ほど支援が決定した。

以上。韓国経済とは全然関係なかったのだが、CDSを出来るだけわかりやすく説明した。この用語が理解出来れば、経済記事がぐっと面白くなるし、どれだけ危険なのかもわかってくる。

今週の韓国経済

日付 KOSPI 為替  KOSDAQ 外国人

27日 1991.16 1129.1 538.34 -388億
28日 2003.69 1124.5 540.35 -1031億
29日 2030.25 1118.7 542.30 5164億
01日 休み
02日 2034.63 1115.5 543.97 3702億

今週の市場は01日が韓国の祝日となっていて、お休みだった。なんで4日分なわけだが、ご覧の通り、株価が上がっている。

特に日本の半導体、世界第三位シェアを持っているエルピーダ・メモリが4800億円の負債で破産申請をしてしまった。韓国のシェアが高まると睨んだ投資家によって、サムスンの株価が最高値を更新した。残念ではあるが、円高、DRAM価格の暴落ではどうしようもない。

サムスン電子のDRAM事業は唯一の黒字とか述べているが、かなり疑わしい。

今週はCDSを説明して時間がかかった。理解してもらえると大変嬉しい。さて、次回のメルマガ予定であるのだが、三ヶ月ぶりに家計債務を特集したいと思う。悪化する家計債務情報をお届けしよう。

読者様の購読に深く感謝する。これからも応援のほどを宜しくお願い致します。

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