第47回「明博大統領、目玉政策の一つ四大ダム河川工事は談合と賄賂、その他の問題山積み」
配信日:2012年6月17日
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今回のメルマガはギリシャの総選挙前に書いているので、今のところ、どうなるか予断を許さない。とりあえず、ギリシャ市民は総選挙前に食料の買い占めに走っているようだ。何かあったときの備えに金を売りに来る人も増えているようだ。
世界中が注目するギリシャの再選挙。それは次回のメルマガのネタとして、今回は明博大統領が提言した目玉政策、「四大ダム河川工事」についてだ。公共工事に潜む談合と賄賂だらけの実態に迫る。では、記事のチャートを貼る。
記事のチャート
四大ダム河川工事とは→暴走する韓国4大河川整備事業→大河川事業: 9カ所の堰で水漏れ→4大河川関連談合→今週の韓国経済
四大ダム河川工事とは
大韓民国政府は最近、納税者の負担で巨大な高費用事業を繰り広げている。2009年6月8日、政府は韓国建設技術研究院が作成したいわゆる「4大河川再生事業マスタープラン」を発表した。
政府は夏季の洪水防止、旱ばつ対策の用水確保、河川環境と生態系の保全、余暇活動の空間作りなどを目標として2012年までに178億ドル(約22兆ウォン)を支出する予定だ。
だがこのように互いに性格を異にする多重的目標が、矛盾することなく一挙に実現され得るのだろうか。
韓国政府はこのために漢江、洛東江、錦江、栄山江など4大河川の本流に16カ所の巨大堰を新設する予定だ。
支流には洪水調整池2カ所と河岸貯留池3カ所が新たに作られる。既存の農業用貯水池94カ所の土手を高くし、4大河川377キロメートルの区間にわたって堤防補強事業を展開する。
政府は当初、漢江と洛東江を運河で連結する計画を立てた。この大運河事業はイ・ミョンバク大統領がドイツのライン、マイン、ドナウ運河を見学した後で浮かんだアイデアだった。この計画は国民や学者たちの猛烈な反対に直面し、09年に撤回された。
4大河川事業マスタープランを詳しく見てみよう。一部既存の堰の区間で追加的な貯留空間の確保のために浚渫をしている。総工事区間691キロメートルから砂と砂利5億7千万立方メートルを浚渫する計画だ。
このほかにも主要支流243キロメートル区間で堤防を補強し、既存の農業用貯水池9カ所を拡張する連係事業が計画されている。河岸には観光産業を育成する とともにサイクリング・ロード、体育施設、公園などを作る予定だ。09年に始まった4大河川事業は10年6月30日現在、堰設置の工程率36%、事業全体 の工程率20%に達した。
このような超大型事業を施行しようとするならば、環境に及ぼす影響を調査するために資料の収集・分析・評価を行うのに相当な時間がかかる。そうであればこそ、わずか4カ月で終わった韓国政府の環境影響評価は皮相的なものとなるほかはない。
「4大河川再生事業」によって完全に新たな人工の生態系が登場する見通しだ。すでに棄損された一部の区間は、この事業によって現状態より良くなることもあ るだろうが、他の多くの河川区間では今もなおしっかりと残っている純自然的生態系が破壊されるだろう。
韓国政府はこのように川の流れのパターンや河川環境を完全に変更することを指して「復原」あるいは「再生」と呼んでいる。国民に「グリーン・ニューディール」として宣伝されているこの事業は親環境事業という名目の下、国民の税金によって進められている。(途中省略)
「ウソ」で固められた事業目的
4大河川事業は国民に「グリーン」の事業として宣伝されてきた。これは現実とは程遠い。だとすれば、これほどに巨大規模・高費用の事業を施行しているのには、どんな他の理由があるのか疑問が生じる。互いに矛盾する4大河川事業の目的を改めて聞いてみよう。
水質改善 「再生」という別の言葉によって「望ましい状態」を作る作業だと言うことができる。水質改善もその中の一つだ。韓国において水質汚染の主要原因は、他の産業化された諸国家と同様に生活下水や産業廃水、そして雨に流されて河川に流入する肥料や農薬だ。
この問題を解決しようとすれば下水および廃水処理施設を設置し、農業の集約性を低めなければならない。
そしてヨーロッパで2000年から「水管理基本方針」に従って施行しているように、水辺に広範囲な緩衝緑地帯を用意するように国家次元で監督しなければならない。河川を運河にするからと言って水質が改善されはしない。
流速が緩くなり水質汚染がむしろひどくなるからだ。
洪水調節 洪水調節も河川工事の重要な目的となり得る。洪水防止をしっかりやるためには平素、水位を低く維持しつつ大規模貯水容量によって洪水に備える貯留池が必要だ。
だが堰で阻まれた区間の氾濫源は流量の変動幅減少によって常に浸水状態におかれ、貯留機能が顕著に変じることになる。その上、堰区間水辺の氾濫源には泥土 が積もる。流量が少ない期間にはいささか河川が揺らいでも河岸が泥土で覆われ、釣り人や観光客に敬遠されることになるだろう。
事実、洪水の被害は河川の氾濫自体が原因である場合よりも、以前に洪水調節の機能を果たしていた氾濫源に堤防が増え続け居住地や工業施設が立ち並ぶなど、 河川周辺の土地利用集約度が日々、増加したことに起因する場合がより多い。その結果、今後数年間に大洪水が人間にもたらす被害は一層大きくなるものと予想 される。
用水確保 自然河川を堰で阻み人工湖に作る工事は日照りの時に用水を確保する対策となり得る。夏の梅雨時期がある韓国では主として冬と春に用水を確保しなければならない。したがってこれも河川工事をする重要な理由となり得る。
だが事業が進行中の韓国4大河川流域にある各都市は水に不足してはいない。水不足に苦しめられているのは島や河川上流の山間地域だけだ。4大河川事業で確 保される用水はこれらの水不足地域には到達できないけれども、政府はこのような現実をあいまいにしている。実際に用水不足地域の多くの農夫たちは4大河川 事業が自分たちの地域の用水不足の現状を改善してくるだろうと信じている。
余暇空間の造成 休息空間の準備や観光産業の育成もまた4大河川事業の根拠として提示される。だが4大河川計画の余暇活動空間の概念は、環境教育や親環境 「生態観光」の概念とまっこうから相反する。国民は自然環境に対する理解と保護を学ぶ代わりに人為的に造られた人工湖を楽しむことに飼いならされることだ ろう。
利益追求の「イデオロギー」
大韓民国政府は韓国で最も重要な4大河川を今、完全に新しく作りなおしている。「4大河川マスタープラン」流域氾濫源の生態系に及ぼす影響を「復原」だと 表現する。だがこれは先に明らかにした通り不適切で、国民をごまかす表現だ。4大河川建設事業は「韓国河川環境の再構成」と呼ぶほうが、より妥当だろう。
今後、予想されるか、あるいは既に現れた実状と政府の主張との間に生じた大きな間隙から推して、政府のこのような用語の選択には必ずや別の特定の動機があ るだろうとの結論に到達することになる。「4大河川再生事業」は現存する河川の環境と河川生態系を基本的に破壊せざるをえない。
それにもかかわらずここに「再生」あるいは「復原」という呼称をつけ、事業がもたらす環境破壊的効果を隠して肯定的イメージを積極的に活用するのであれ ば、国民が政府の政策をより簡単に受けいれるようにする効果を享受できる。これは「国民の意志を操縦」する恵沢あるいは「煽動」行為と呼んで当然だ。
政府がそのようなやり方で主張を貫徹し、政策を履行するのは「望ましい管理体系」にまっ向から反し、利益ばかりを追っている「イデオロギー」にすぎない。(「ハンギョレ21」第826号、10年9月6日付、アルベルト・ライフ/ドイツ・フライブルク大学教授)
(韓国はいま:「4大河川再生」という煽動 )
記事の全文はかなり長いので三分の1ぐらいにして割愛したのだが、それでもこの量だ。しかし、この教授が述べたことが真実なら,韓国は一体何のためにこの巨大な公共工事を行ったのか。
ここに韓国政府が説明用に作った四大河川再生マスタープランがある。
http://www.a-rr.net/jp/exchange/docs/4RiverRestoration_KOREA.pdf
上の記事を比較しながら読んで頂きたい。どれだけ嘘だらけかよくわかる。効果が期待されないのにどうして強行したのかは最後に出すが、財閥企業(現代建 設)のためだ。財閥グループを中心とした談合と賄賂のためだった。ここでこの工事を視察したラムサールネットワークの文章を読んで欲しい。
暴走する韓国4大河川整備事業
いま韓国では「4大河川再生整備事業」という名称の一大プロジェクトが著しいスピードで進行しています。
ソウルのシンボルとも言えるハンガン(漢江)、公州や扶余を流れるクムガン(錦江)、全羅南道を縦断して木浦に至るヨンサンガン(栄山江)、慶尚道を縦断する一番長いナクトンガン(洛東江)で大規模な土木工事が行われています。
5.7億m2の川底を浚渫、16か所で固定堰(ダム)、6か所で調整池やダムを建設 し、377kmの堤防を整備、1206kmの自転車路建設など、総額22兆ウォン(約1兆8000億円)以上という大型公共事業です。洪水を防ぎ、水資源 を確保し、生態系を復元するという目的で行われ、イ・ミョンバク政府の掲げる「グリーン・ニューディール」の目玉とされています。
ラムネットJでは、今年2月末と7月上旬の2回にわたって市民視察を行いましたが、防災や利水などの事業目的は口実で、実際は多大な環境破壊を引き起こす有害事業であることが分かりました。
特に工事によって渡り鳥の餌場として重要な河川付近の湿地や水溜まりなどが破壊され、幾つものダム建設により山・川・海のつながりがズタズタに切り裂かれている光景は目を覆うばかりでした。
また、環境アセスの期間がわずか4か月ほどで、昨年の11月から本格的な工事を始め、2012年の完了を目指して、既に全体の60%が終了するという急 ピッチなやり方に不安と怒りの声が上がっています。韓国におけるこの事業の影響は、日本を含む東アジア全体の環境問題であり、決して他人事ではありませ ん。
(ラムサール・ネットワーク日本:暴走する韓国4大河川整備事業 )
これを見る限りでは中国の無理なダム建設とやっていることがたいして変わらない。中国の場合は陸続きで周辺諸国に被害が及ぶ分酷いわけだが。そして、この工事は急ピッチで進められているので実は問題が色々起きている。
大河川事業: 9カ所の堰で水漏れ
4大河川(漢江・洛東江・錦江・栄山江)再生事業の一環として設置された堰(せき)のうち、半分以上で一部水が漏れていることが、5日までに分かった。
韓国政府は、水漏れはわずかで安全性には問題がないとしているが、野党や一部市民団体は事業を急ぐあまり工事がずさんになったのでは、と主張している。
国土海洋部(省に相当)が同日に公表したところによると、先月24日から28日にかけ、韓国施設安全公団に依頼して全国16カ所の堰の漏水実態を調査した結果、計9カ所の堰の60地点で水が漏れていることが分かった。
漏水が発生した堰は、洛東江に建設された堰8カ所(尚州堰、洛丹堰、亀尾堰、漆谷堰、江亭高霊堰、達城堰、陜川昌寧堰、昌寧咸安堰)と錦江の公州堰だ。尚 州堰は中央部分の34地点で水漏れが見つかった。洛丹堰は左側の4地点で水が漏れていたほか、亀尾堰、漆谷堰、江亭高霊堰、達城堰などもそれぞれ2ー3カ 所で水漏れが確認された。
国土海洋部は水漏れについて、漏水量の測定が困難なほどわずかだと説明している。韓国施設安全公団のキム・ヨンファン・チーム長は「堰のコンクリート構造 物を建設する際に生じる縦横の施工継目から水が漏れ出す可能性はあるが、設計書通りに施工しており、量もわずかなため、安全性には問題がないとの結論を下 した」と説明した。
国土海洋部は今後、外部専門家とともに16カ所の堰に対する細部点検を実施し、水漏れ部分を補修する計画だ。シム・ミョンピル4大河川事業本部長は「安全性には問題がないが、冬季の結氷や長期的な耐久性の低下を防ぐため、補修・補強をしていく」と話している。
これに対し、野党・民主党のキム・ジンエ議員は「李明博(イ・ミョンバク)政権は2年という期間を定めておきながら『速度戦』でごり押しした。昨年の冬に はマイナス15ー20度の日にもコンクリートを打設するなど、養生(打ち終わったコンクリートを保護し、充分に硬化させるための作業)をきちんと行わな かった」と述べ、ずさんな工事が行われた可能性を指摘した。
劉夏竜(ユ・ハリョン)記者
ソース:朝鮮日報日本語版 2011/12/06 08:31
もはや、この公共工事が無理に2011年に完成させなければならないことだけが重視されて、環境、安全などは皆無。既に国民のために巨大な税金を投入して いるというのに、周辺地域の水不足はまったく解消されないという。正直、調べていて頭が痛くなってきた。そして、談合と賄賂により、最後は利益は財閥に還 元されるというお約束な展開。
4大河川関連談合
【ソウル=ニューシス】カン・ジンヒョン記者= 5日午後、ソウル瑞草区盤浦洞の公正取引委員会で開かれた’4大河川興し事業1次ターンキー
工事、入札関連20建設事業者不当共同行為’関連全員会議で公正委関係者および建設会社関係者が会議を終えた後、審判室を出ている.
パク・ジュヨン記者= 4大河川事業が尋常でない。
4日、大邱地域で4大河川事業と関連して、秘密資金を造成・横領し、賄賂をやりとりした疑惑で、施工者と協力業者役職員、釜山地方国土管理庁公務員など計11人を拘束されたのに続き、5日には現代建設など19建設業者が入札過程で談合をしたという公正委発表が出てきた。
大型建設会社が互いに組んで工事費を増やし、血税を横領した事が摘発されたわけだ。4大河川工事15区間の落札金額は計4兆1000億ウォンで、予定額の93%水準だった。
専門家は、一般的に競争入札の落札値率は65%線で決定されると説明する。建設業者の入札で、4大河川工事費が1兆ウォンほど余計にかかったという推測まで出てくる理由だ。
こうした中で、一部では大統領選挙を6ヶ月余りに控えた状況で溢れでた今回の談合疑惑が、今後政界にメガトン級の波紋を投げるゲートになるという観測が出てきている。
カギは、今回の談合事件に関与した現代建設が果たして政府から特典を受けたかの可否だ。
現代建設は、イ・ミョンバク大統領と離そうとしても離すことはできない関係。イ大統領は、1965年に現代建設に入社して1988年まで勤めた。
今回の談合事件に大きく関与した疑惑を受ける、ソン・ムニョン前専務もイ大統領と格別の縁を持っていたと分かった。
ソン・ムニョン前専務は、これと関連して、”その方が会長である時、私は次長だった。天と地ではないのか”として関連性を全面否認した。公正委全員会議の結果に対しては”みじめだ”という心境を明らかにすることもした。
しかし、民主統合党は’4大河川事業’と関連した秘密資金、側近関連疑惑を明らかにするという勢いだ。
弁護士出身の民主党ソン・ホチャン議員はこの日、公正委全員会議が始まった午前10時から午後4時半までずっと席を守った。昼休みを除けば、5時間近く会議を見守ったわけだ。
ソン議員はこの日、記者たちに会い”建設会社は損害を被ったと良い、役員は悔しいと言うが、それでいったい誰が利益を見たものか”として”誰のための4大河川事業であったかが、今は一つ一つ糾明されなければならない”と強調した。
特にソン議員は、今回の4大河川関連談合波紋に対して”当然、秘密資金や側近関連疑惑も確認してみなければならない”と明らかにした。(以下、省略)
ソースは韓国語なので2CHより記事掲載
>韓国の公正取引委員会は5日、李明博政権が進める四大河川の大規模整備事業の工事入札で談合があったとして、韓国建設大手8社に総額約1120億ウォン(約75億円)の課徴金の支払いを命じたと発表した。
命令を受けたのは現代建設など。8社は2009年に行われた同事業の第1次工事入札で、事前に話し合って受注業者を決定。平均90%以上の落札率で計14件の工事を受注した。
また、談合の協議に加わって、工事を受注した8社の下請けに入った別の建設会社8社に対しても是正命令が出された。
同事業は、李大統領が08年に「韓国版ニューディール政策」として打ち出した国策事業で、しゅんせつによる水質改善やダム建設などで計約22兆ウォンが投入された。落札率が高いことなどから、野党議員が入札直後から談合疑惑を指摘していた。
(http://www.nandemo-america.com/mobile/?p=24596)
このように課徴金はわずか75億円である。22兆ウォンの多額な資金が投入されているので、この建設会社の儲けは凄まじいはずだ。75億円なんてはした金だろうに。財閥建設大手の談合グループによる公共工事。これが利益誘導でなければなんだというのだ。
ということで四大河川工事は完成しても,まだまだとんでもないことになりそうな予感がするわけだ。もう十分、お腹いっぱいかもしれないが、どう見てもずさ んな工事で、韓国政府が述べているような経済効果はなさそうだ。だとすれば22兆ウォンの税金の行方。これからも注目したい。
今週の韓国経済
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 外国人(ウォン)
11日 1867.04 1165.9 469.59 1345億
12日 1854.74 1170.5 471.91 -493億
13日 1859.32 1168.4 470.96 1553億
14日 1871.48 1166.3 472.03 1023億
15日 1858.16 1165.6 467.75 -2425億
今週の韓国経済は前回述べた通り、たいした変動はしていない。
ただ、17日のギリシャ次第でどうなるかわからない。しかも、ギリシャ以外にもスペインの国債が格下げされて、ジャンク債1歩手前になっていたりと、問題が多すぎる。
今週はこれで終わりだが、来週はギリシャの選択で起こる韓国経済の一週間を見ることになる。ギリシャはユーロ脱退になるのか。緊急財政策は出来るのか。全世界が注目する一週間になると思う。というより、最近、こういうイベントが多すぎる気がする。
読者様の購読に感謝する。今後とも温かい応援のほどを宜しくお願い致します。