第72回「サムスン帝国による韓国支配の加速。来年の韓国経済の行方」
配信日:2012年12月23日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週のメルマガは韓国経済の1年を振り返る総括的な内容なのだが、1年間もあれば、様々な出来事が起きた。第3回韓国F1GP、麗水万博、ナロ号打ち上げ 延期。そして、ご存じの通り、韓国の次期大統領は朴槿恵氏となった。このように2013年も振り返って見れば様々なイベントがあった。
もちろん、米韓FTAの締結、日韓通貨スワップの拡大措置の廃止、経済不振、原発事故、電力不足、アップルとサムスンの特許紛争、北朝鮮のミサイル、ウォン高による追い詰められる輸出業といった韓国経済にも広く関わる出来事もあった。
これらを全てを一度に総括するのは大変難しいので、来年のメルマガですこしずつ述べていくつもりだが、今年、一番重要な出来事はサムスンによる、韓国の支配体制の強化である。それを語らずして、総括をはじめたところで何の意味もない。では、記事のチャートを貼る。
記事のチャート
サムスン電子の独歩高→サムスン、現代以外の株は大暴落→今週の韓国経済
サムスン電子の独歩高
サムスン電子の株価だけ急騰した結果、相場全体が上昇しているかのような錯覚を与えるため、韓国総合株価指数(KOSPI)へのサムスン電子の組み入れ比率を見直すべきではないかとの意見が浮上している。
金融投資協会のパク・チョンス会長は「フィンランドでノキアの時価総額が市場全体の60%を超えた際、組み入れ比率を減らし、指数を見直した例がある。韓国でも株価指数に占めるサムスン電子の割合を調整する必要がある」と指摘した。
その上で、サムスン電子の組み入れ比率を10%前後に減らすか、サムスンを除外した新指数を設けることを選択肢として挙げた。サムスン電子はソウル株式市場の時価総額の18.5%を占め、KOSPIの変動にも相応の影響を与えている。
しかし、KOSPIを算定、発表している韓国取引所の関係者は「指数は連続性が求められるため、KOSPIの算定基準を修正する計画はない。
仮に今後市場の状況が著しくゆがめられた場合には、サムスン電子を除外した参考指数を発表することも検討可能だが、現時点でそういう計画はない」と述べた。
サムスン電子の株価が上場来高値の143万7000ウォンを付けた先月23日、KOSPIは1911.33で引けた。
しかし、本紙がKDB大宇証券に依頼し、サムスン電子を除いて算出したところ、KOSPIは1811.64にとどまった。年初来のKOSPIの騰落率を見ても、サムスン電子を除くと0.8%の下落だが、サムスン電子を含めると4.8%の上昇だった。
大宇証券のキム・ハッキュン投資戦略チーム長は「KOSPIだけ見ると、サムスン電子という単独銘柄で指数を100ポイント、5%以上引き上げた計算になる。サムスン電子とそれ以外の上場企業785社の間で二極化が深刻化していることを示している」と述べた、
株価の二極化進行は、欧州財政危機など世界経済の低迷で韓国の輸出企業が苦戦する中、世界のスマートフォン(多機能携帯電話端末)市場で首位を独走してい るサムスン電子の株価だけが独歩高となっているためだ。その上、株価が上昇し、時価総額が増加すればするほど、株価指数に与える影響が高まる。
サムスン電子の時価総額に占める割合は昨年末の15.3%から26日現在で18.5%まで上昇した。同割合は2003-04年に20%を超える水準まで上昇した後、07-08年には9-10%まで低下していた。
問題点は、実際にはサムスン電子の株価だけが上昇しているにもかかわらず、投資家が市場全体が好転していると錯覚する可能性があることだ。
また、資産運用業界ではファンドの収益率を評価する基準としてKOSPIなど株価指数を活用しているが、サムスン電子に投資していないファンドは運用益が低いと評価される可能性がある。
ドリーム資産運用のイ・ジェヒョン専務は「サムスン電子の株式を買うと、(サムスンの株価変動による)影響を受け過ぎる。かといって、買わなければ収益率が低下するのではないかと心配だ」と述べた。
(朝鮮日報、サムスン電子が独歩高、株価指数に見直し論)
中央日報、朝鮮日報といった韓国の主要紙はサムスングループによって運営されている。サムスングループは韓国を支配する巨大な権力を有した一大組織であ る。その力は政治、金融、メディア、警察、裁判所といったものを掌握し、これまでの韓国政権のウォン安政策はこのサムスンを強くするために行われた。
このように書いていると小説の秘密組織の設定みたいに思えるんだが、本当のことだから末恐ろしい。サムスン電子の時価総額を占める割合が明博政権になってから、この4年間で9-10%→18.5%となった。
つまり、時価総額の株価だけ見てもほぼ二倍である。リーマン・ショック後のウォン安で一番得をした韓国企業は他ならぬサムスンだったといっても、過言では ないだろう。これが一体何を意味するのかは、最初の結論に戻る。すなわち、サムスンによる、韓国の支配体制の強化である。
もはや、韓国ではサムスンに手を出せないのだ。2012年サムスン帝国の完成といっていい。サムスングループの資産規模だけでも韓国全体の2,3割を超え ている。これは世界的な大企業から見ても異例中の異例である。サムスングループは国家企業集団ではなく民間企業であるのに国のトップを7年間独走し続けて いる。
サムスン、現代以外の株は大暴落
【ソウル聯合ニュース】韓国金融委員会が株式市場でサムスン電子と現代自動車の株価のみ上昇する状況について、対策に乗り出した。
株価の偏りにより、企業の資金調達先としての証券市場機能がまひしたとする金錫東(キム・ソクドン)委員長の指摘による措置だ。金委員長が指摘する国内証 券市場の偏りとは、サムスン電子と現代自動車など、ごく少数の財閥グループが市場を占める割合が極端に大きい現象を指す。
同委員会の分析によると、総合株価指数(KOSPI)が昨年初め以降、6.6%下落したが、サムスンと現代自を除けば指数の下落幅は15.1%に達する。
特に、サムスンと現代自を含めた指数と、2社を除外した指数の差は、今年に入って急激に拡大し証券市場における両極化現象が一段と際立った。
この間、サムスンの株価は46.8%、現代自は27.4%上昇した。サムスンの株価が150万ウォンを突破した11日現在、国内時価総額1132兆ウォンのうち二つの企業が270兆ウォン(23.0%)を占める。
金委員長は「特定の企業を除けば大部分の企業の事情は思ったよりも厳しい」としながら「企業が資金を直接調達する窓口としての証券市場の機能がまひしているのでは」と指摘した。
同委員会が分析対象とした造船(-44.5%)、運送(-33.6%)、建設(-30.9%)、鉄鋼(-10.8%)など主要業種の株価はここ2年で急落 している。さらに銀行(-34.9%)、証券(-42.9%)など金融部門の不振も浮き彫りになり、実物の低迷が金融にも出ていると指摘した。
(深刻な韓国株式市場 サムスンと現代自だけ勝ち組? | Joongang Ilbo | 中央日報)
この記事は今の韓国経済の現状を端的に表している。サムスン、現代以外の韓国企業は負け組ということだ。
そのため、経済格差が今年一年で恐ろしく進行したわけだ。その経済格差の是正が焦点となったのだが今回の韓国の大統領選挙である。だが、米韓FTAの廃止 を宣言していた対立候補の文在寅氏は敗れてしまった。投票率は75%と大変高い数字で、投票率が高いほど有利だと言われていたのにもだ。
おそらく、これはマスコミの逆アナウンス効果だと思われる。政策はどっちにも似たようなものだが、米韓FTAを廃止されたくないサムスンが裏で手を回し て、マスコミに報道させた。投票率が高くて、もう勝てるなら寒い中、投票に出かけなくてもいいという有権者の思考を操作した。
日本の選挙予測も同じようなものだ。自民党の圧勝と報じられて、選挙に行かなくてもいいやと思った人も多いだろう。
日本はいいとして、韓国の場合はそれが選挙結果に影響を与えた。なぜなら、今回の大統領選挙で最も投票が悪かったのはソウル市だったからだ。投票率は50%である。逆に地方が高かった。
このことから、文在寅氏を応援していたのは経済格差で苦しんでいる地方の韓国人だったということになる。そして、ソウル市の票の低さが命取りとなった。それについては年明けのメルマガネタになるので、そこで詳しく見ていく予定だ。
繰り返しになるが、今年一年で強くなったのはサムスンと現代自動車の二つ。それを実現させたのが韓国の大統領、明博氏による財閥優遇とウォン安政策だった。
この流れが是正されることはない。サムスンの支配体制はますます強固となり、韓国の経済格差はさらに増加する。来年も続くだろう。サムスンが存在する限り。
今週の韓国経済
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
17日 1983.07 1072.50 485.48 263.30 1578億←16日は日本の総選挙
18日 1993.09 1072.80 483.19 264.70 2304億
19日 韓国の大統領選挙
20日 1999.50 1074.70 479.21 264.15 2450億
21日 1980.42 1074.30 478.06 ****** 4099億
今週の市場は数値の上でほとんど変化はないように思えるのだが、18日は1070ウォンの一時的なウォン高となった。大統領選挙前日の動きであるが、その後、少しウォン安に触れて、管理人が予想した1075ウォン付近になっているのに注目して頂きたい。
依然としてゴールドマン・サックスが韓国経済は大丈夫だと指摘しているので、ウォン高の傾向は止まらないだろう。現、明博政権の役目は終了したので、これ からまだ介入するかも未知数だ。政権発足前は株価が上昇することが多いのだが、KOSPIは20日、2000台を一時的に回復したが、その後は下がってい る。
選挙結果への市場の反応はそれほどよくはない。ただ、外国人投資家は先月からずっと買いに走っている。経済は確実に悪くなるが、しばらくはこの状態を維持すると見ていいだろう。
韓国市場はアメリカの動きに大きな影響を受けるので、アメリカの財政の崖問題がどうなるかで変わってくる。貿易依存国家である韓国経済の運命は結局、外資に握られている。韓国を支配しているサムスンもその一つである。
以上。今年はこれで終わる。72回で2012年、最後の配信となったわけだが、単純に考えて48回、メルマガを毎週書いてきた。次回は韓国の大統領選挙を振り返る予定だ。
少し、早い挨拶となるが、今年一年、本当にありがとうございました。購読して頂いている読者様には心からお礼を申し上げます。
引き続き、来年も韓国経済の様々な現状を鋭く分析した記事をお届けするので、これからもよろしくお願い致します。
追伸:ノロウイルスが大流行しているそうなので、くれぐれも体調にはご注意ください。
2012年12月22日 ジンボルトより