第84回「サムスン、シャープと資本提携の狙いはシャープの高詳細液晶技術とデジタル複写機技術の買収」
配信日:2013年3月24日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週の韓国経済は民主党の円高放置によって経営難に陥った日本のシャープと資本提携した サムスンの特集である。どうして、サムスンがシャープに資本提携を持ち込んだのか。それを詳しく追っていこうと思う。すでにタイトルで「技術」と書いてあ るが、順を追って見ていく。では、記事のチャートを貼る。
記事のチャート
シャープ、サムスンと資本提携=103億円調達→ サムスンの狙い→シャープ・元副社長の美談→シャープの命運は日本人の応援にかかっている→今週の韓国経済
シャープ、サムスンと資本提携=103億円調達
シャープは6日、韓国サムスン電子との資本・業務提携を発表した。シャープが実施する第三者割当増資をサムスンが約103億円で引き受ける。
サムスンは株式の約3%を握る第5位の大株主となる。シャープは業績悪化で自己資本が低下しており、増資で財務基盤の立て直しを急ぐ。
シャープは4月以降、サムスンに対し、薄型テレビ用の大型液晶パネルやスマートフォン(多機能携帯電話)などモバイル機器向け中小型パネルの供給を拡大。 高画質・省電力のIGZO(イグゾー、酸化物半導体)液晶も提供する。主力の亀山工場(三重県亀山市)の稼働率が低迷しており、パネルの供給先を確保する ことで、液晶事業の収益の安定化を図りたい考えだ。
シャープは調達資金を、主に液晶パネルの高精細化技術の開発に充てる方針だ。モバイル機器向けパネル設備などにも投資する。ただ、サムスンへの技術供与は行わないという。
(時事ドットコム:シャープ、サムスンと資本提携=財務基盤強化で100億円調達)
円安になって韓国製品は日本製品に太刀打ちできなくなりつつあることは前回に触れたとおりだ。しかし、この数年間の円高の影響でシャープがサムスンに資本提携をするはめとなった。
サムスンの狙い
サ ムスンがシャープを助けた狙いは、日本企業が独占している「複写機技術」と「高詳細液晶技術」の買収。もし、シャープの複写機技術がサムスンに買収されるなら、この独占も危うくなる。
確かにシャープの技術とトップ3のリコー、富士ゼロックス、キャノンの技術には差はあるが、シャープ(シャープは5位)が持っている特許技術でサムスンに大量生産されれば、独占構図は多少なりとも変わってくる。
なぜなら、複写技術は高機能化が進んでしまい、あまり技術的な差が付かなくなっているからだ。つまり、シャープの技術がサムスンに買収されてしまえば、上位3者は非情に困る展開となる。
数年前、資本に物を言わせた赤字をスルーした大量生産、低価格販売でキマンダやエルピーダは破産した。このようなDRAMの悪夢が再来するかもしれない。
シャープを日本企業の誰も助けないことが、実際、この先にサムスンに技術売却という嬉しくない事態も起きうることだ。
ただ、他の日本企業も苦しい状況ではあるので、助ける余裕がないのだろう。後、数年ぐらい円安傾向が続けば業績も回復するが、それまでシャープが持つかどうかは本当のところはわからない。しかも、シャープの経営陣はこんなレベルだ。
シャープ・元副社長の美談
シャープ・元副社長 「サムスンが技術を盗むから、逆に『感謝してくれるはず』と思って技術を教えた。すると提訴してきた」
こんな情けないレベルなのだ。
シャープの経営陣が特許技術に対しての認識不足というものが窺える。これが美談のように語っている時点で間抜けなのは言うまでもない。シャープを応援している管理人ではあるが、こんな経営陣には呆れてものがいえない。
良い技術を持っていても生き残れない厳しい現実。日本人はこの資本提携によってシャープを見限ることだってありうるのに、はっきり言えば最悪の選択したといえる。しかも、経営陣の話からすれば自業自得と指摘されても致し方がない。
だが、シャープが潰れたらシャープの技術は、他の日本企業が必要としないので、サムスンに持って行かれることになる。そうすれば、シャープと提携している中小企業も苦しい立場になる。しかも、サムスンとの資本提携は日本政府の支援にも否定的な立場となる。
日本航空、JAL再生についてはかなりあくどいことが行われたようだが、それでも再上場は果たした。前原氏と稲森氏の密約が暴かれるかはわからない。日本の銀行だって、シャープが1000億円の公募増資を行うとしたら否定的な見解をした。
シャープの命運は日本人の応援にかかっている
どちらに転んでもサムスンが得するようにしかなっていない。今後、シャープがどうなるかは暗雲立ちこめた状況だ。潰れても特許技術がサムスンに持って行かれる。このままだと破産して、結局、サムスンに技術を安くで買いたたかれる。
そして、その技術が日本企業を将来的に脅かす。サムスンと提携したシャープを助けて欲しいとはいわない。だが、日本人がシャープを見限れば、上であげたような負の連鎖が起こる。
そのような理由から、管理人はシャープをまだ応援する。何か必要な家電があれば、シャープ製を選ぼうと考えている。
今週の韓国経済
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 外国人(ウォン)
18日 1968.18 1114.60 541.09 260.30 -3650億
19日 1978.56 1111.60 546.26 260.30 -1948億
20日 1959.41 1116.10 546.26 258.50 -3809億
21日 1950.82 1115.70 544.56 256.35 -3164億
22日 1948.71 1119.30 551.25 256.30 -3318億
以上。今週の予想ウォンは1105~1130だった。一時的には1120ウォンを超えた。ただ、イタリアの問題だけではなくて、突如、浮上したキプロスの預金封鎖によるバンクラン(預金大量引き出し)懸念である。
キプロスは人口わずか110万人の欧州の国。タックス・ヘイブン(租税回避地)候補の一つとして知られている。法人税が安いので、他国の企業が投資をしやすい環境にあった。また、トルコ系やロシア人といった民族が複数移住しているのも歴史的な背景にある。
特にロシア人の高額投資が多いらしく、ロシアからの投資が20%を超えているそうだ。その預金口座を封鎖して10%の課税を徴収するというニュースが先週にあって、月曜日から日経平均は大荒れだった。
キプロス支援に乗り出す欧州。キプロス支援を拒否するロシア。キプロス国内も預金封鎖での課税に揉めており、来週の市場は不安定としかいいようがない。また、忘れてはならない北朝鮮リスクもある。
最近、ここ2週間連続で外国人が投げ売りしているのも気にしている。毎週、チェックしているのでこういうことがわかるわけだが、データによれば、3月7日~3月22日までずっと投げ売り状態である。KOSPIがかなり下がっているにも注目だ。
一般的に、韓国経済のKOSPIが2000台を切れば不調ということは何度も説明してきた。ウォン安なのに不調という韓国経済。どこかミスマッチだが、韓国経済に良い材料がないので当たり前である。さて、来週の予想ウォンは1115~1125というところだ。
次回は外国人の韓国投資について見ていく。先ほど少し触れたが2週間投げ売りだった。しかし、2月までは外国人の韓国株・債券保有残高は過去最高を記録していた。来週も投げ売り傾向が続くとおもわれるが、いくつか興味深いニュースを交えながら解説していく。
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