第96回「478兆円規模。シャドーバンクが中国経済を第二のリーマン・ショックへと導くのか」
配信日:2013年7月7日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週の韓国経済は、前回に予告したとおり、中国経済の話題である。先週から株価の下落が続いている中国だが、それは一体どうしてなのかというのが今回のテーマである。その一つの答えに、最近、話題となっているのが「シャドーバンク(影の金融)」である。
これについては初めて聞く読者様も多いと思われるので、シャドーバンクというものがどういうものかについて説明してから見ていくことにする。では、記事のチャートを貼る。
記事のチャート
シャードバンクとは何か→最大478兆円規模?だが、その実態は誰にもわからない→第二のリーマン・ショックが中国で起こるのか?→韓国経済への波及→先週の韓国経済→今週の韓国経済→7月の韓国経済特集
シャードバンクとは何か
シャドーバンクを日本語に直せば、「影の金融」といった意味となる。
私的融資や信託ローン、ノンバンクからの借り入れから、住宅関連のモーゲージブローカー、ファイナンス会社、資産担保証券、資産担保コマーシャルペー パー、銀行の連結対象の投資子会社、マネー・マーケット・ファンド、ヘッジファンド、デリバティブ、銀行持株会社などといったものから構成されている。つ まり、言い方が昭和ぽいが表には出ないが確実に存在する金融である。
最大478兆円規模?だが、その実態は誰にもわからない
問題はその規模が誰にもわからないことだ。これがCDSと似ているところ。もっとも予想が大きいのは、アメリカのムーディーズが数字である。 私的融資や信託ローン、ノンバンクからの借り入れ、資産運用商品を通じた銀行の簿外預金などシャドーバンキング業務の規模は2012年末までに29兆元に 達したとされている。日本円で直すと、478兆5000億円であり、中国のGDPのおよそ3割にも当たる。もっともその実態は中国政府ですら把握できていない。
前回、中国の話題に触れたときで銀行間市場のオーバーナイトの金利が30%を一時的に超えたことを伸べた。銀行同士での貸し借りができない。中国政府が資金供給をしたという記事もあった。他にもなぜかATMから預金を引き出せなく、システムトラブルと片付けていた銀行もあった。そういった銀行がシャードバ ンクからお金を借りていても何ら不思議はない。
しかも、株価暴落は資金供給がされても収まらずに上海総合株価は今週2000を割った。
このような状態から、今年の経済成長率が7.5%を維持できるわけもない。しかも、貿易統計で4倍、さらに他の統計では10倍といった水増しとは思えない数値が確認された。もはや、中国の真のGDPは日本以下、いやドイツ以下だと述べても、それほど間違っているとは思えなくなってきた。
これの問題は日本の国債より酷い。なぜなら、利子によって天文学的な単位で増えて行くからだ。経済に天文という単語が出てきて驚いたと思う。だが、実際に シャドーバンクで借りた利子がわずか数パーセントに済むとか誰も思わない。少なくとも年利10%以上だろう。この規模での借金が年利10%で増加するな ら、天文学的な数字で増加といっても強ち間違いではない。
478兆円規模でのシャドーバンクでの利子を唯一返すことができる方法は中国が偽りでも7.5%以上の高成長をするしかないのだ。低成長では利子の高さで飲まれてしまう。
シャドーバンクの取り立ては日本の消費者金融より酷いと思われるので、借りた人間は表銀行の借金より、こちらを優先するだろう。なら、表銀行の借金はいつ までも放置されて、表銀行は資金を回収できない。よって銀行は資金不足に陥り、倒産してしまう。システミックリスクによって、全ての銀行に波及すれば、第 二のリーマン・ショックの完成である。
だが、中国の場合はただの金融ショックだけで終わらない。報道はされていないが確実に増加している「暴動」が発生することになる。それは中国共産党を潰す 社会問題となる恐れもある。だとすれば、中国政府はシャドーバンクを潰そうと動く可能性がある。それも第二のリーマン・ショックを引き起こしかねない。
第二のリーマン・ショックが中国で起こるのか?
さて、シャードバンクが第二のリーマン・ショックを引き起こす理由は上で述べた通り、二つである。ここで整理しておこう。
1.シャドーバンクの利子増加によって、表銀行の返済が滞る。表銀行が倒産してシステミックリスクを誘発して、リーマン・ショックへ
2.規模が拡大するシャドーバンクを中国政府が規制(高金利の禁止など)に入ることで、シャードバンクのみならず、実体経済を潰してしまい、リーマン・ショックへ
1については上で説明してきたので、2についてだが、そもそもシャドーバンクがこれだけ拡大してきた原因は、市場金利が浸透していないためだ。また、不動産バブルの投資などにもシャドーバンクの資金が大きく影響している。だとすれば、シャドーバンクは中国経済成長のある意味、一つの車輪と捉えることができ る。
ここでもう一度金利について説明しておく。金利とは将来におけるリターンとも取れる。つまり、今、お金を貸して、将来には金利がついてこれだけ資産が増加する。その金額は多ければ多いほど、お金が回る。今、中国政府が一時的に高金利を認めているわけだが、これが高金利を認めないとしたら、どうなるのか…… 低金利で大金を貸すようなことはない。つまり、資金不足となっていく。
お金を借りている企業は倒産し、貸した金融も潰れるといった連鎖が起こりうる。今は大丈夫だとしても、そのようなことが起これば、これも第二のリーマン・ショックに発展することになる。
韓国経済への波及
色々と見てきたが、1と2は同時並行で起こりえるので、どちらにせよ中国の崩壊は避けられない。それが数年後なのかは定かではないが、韓国経済の中国依存 は24.5%で最大の取引先である。今年はさらにその依存が増えると思われるので、崩壊が確実視される中国経済に縋る韓国経済という図式が完成する。
韓国経済は外部的に中国経済崩壊、内部的にも1000兆ウォンの家計債務危機、4000億ドル規模の外債の増加という危機的な状況を抱えていることにな る。どちらも絶賛進行中ということで、今年の9月以降に峠を迎えると予想している。他にも、財政の崖問題などもあるので、9月以降の韓国経済についてはか なり注目だろう。
先週の韓国経済
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 外国人(ウォン)
24日 1799.01 1161.40 508.65 233.60 -2493億 日韓通貨スワップ延長なし報道
25日 1780.63 1160.20 480.96 234.10 -1358億
26日 1783.45 1154.50 493.07 232.15 -2169億
27日 1834.70 1149.70 512.25 239.60 1057億
28日 1863.32 1142.00 519.06 242.00 4430億 ←中韓通貨スワップ延長報道
先週の予想レートは1140~1170だった。予想範囲内を推移していたわけだが、27、28日に急激に回復している。これは韓国の5月の経常収支が86 億ドルと過去最大となったニュースや中国株価の下落に歯止めがかかったことがあげられる。経常収支は4月が39億ドルなので、なんと二倍以上である。た だ、これだけで素直に喜べるほど韓国経済の状態は良くない。
経常収支というのは、貿易収支、貿易外収支、移転収支といったものに分けられてるわけだが、大事なのは貿易収支の輸入と輸出の差である。そのニュースを出しておく。
>関税庁が14日に公表した「5月の輸出入動向」によると、5月の輸出額は483億6300万ドル(約4兆5862億円)で、前月より4.5%、前年同月 比で3.2%それぞれ増加した。輸入は424億4800万ドルとなり、前月比3.1%減、前年同月比では4.6%減となった。
注目は輸入が減っていて輸出が増えているところだ。これは不況型黒字の典型例ともいえる。つまり、経常収支が過去最大と喜んでいるわりには、輸入が減っているので内心の経済状態は良くないといえる。
来週の予想レートだが、中国株価の下落が一段落つき、経常収支が過去最大の黒字となったことでウォン高に推移するのではないかと予想する。1130~1145というところだろうか。ただ、中国の動向が読めないので不安な要素はある。
今週の韓国経済(7月6日追記)
6月は第5週があってメルマガが先週休みだった。それで直前の情報が1週間前では得られないので、7月6日に1週間の韓国経済を振り返っておく。といっても、今週はそれほど動いていない。
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 外国人(ウォン)
01日 1855.73 1132.40 527.81 242.30 -300億
02日 1855.02 1134.00 526.92 242.25 382億
03日 1824.66 1143.70 521.31 237.45 -2773億
04日 1839.14 1139.40 525.22 239.30 -853億
05日 1833.31 1142.30 525.40 239.15 -1501億
今週の韓国経済は日経平均が14000円を回復する中で、KOSPIだけが下がっていく感じだった。もっとも1800以下にはなってないので、底は 1800で硬いと思われる。次の重要な数値はKOSPI1800以下となるので、ここが1600まで下がっていくとリーマン・ショック前のKOSPIとな る。外国人も今週は様子見が強い。
ウォンのほうはあまり値動きはしていない。予想レート範囲内で面白みにかけていた。来週の予想も1130~1150というところだ。
後、6日の時点でサムスンの株価がまた下がっている。5日に過去最高益を上げたニュース発表とともに暴落というのは珍しいわけだが、あれだけ大量生産して 出荷数を増やして、過去最高益が前年とたいして変わらないなら、スマートフォン依存の限界が見えたことへの失望売りだと分析している。
7月の韓国経済特集
これはおまけなのだが、7月分の特集内容がだいたい決まったので知らせておこう。97回は日韓通貨スワップが延長しなかった話。98回は10年ぶりに行われることとなったIMFと世界銀行の韓国へのストレステストについて。99回はサムスンの株価と衰退。
そして、8月に入るがいよいよメルマガ100回目を迎える。100回目の予定は2013年9月以降の韓国経済の展望である。
100回目は2013年9月から峠を迎えるであろう韓国経済の問題点を浮き彫りにする。以上のような予定となっているので楽しみにしていただきたい。
以上、今週はこれで終わるが来週の予定は、日韓通貨スワップが7月4日で期限切れとなり、延長しないという決定が出た。このように日本との関係を断ち切っ たあと、韓国の朴槿恵大統領は中国に通貨スワップ延長を自ら申し出た。これはますます中国依存、属国化のフラグだろう。この辺りの経緯を見ていこうと思 う。 読者様の購読に深く感謝する。これからも温かい応援の程をよろしくお願い致します。