第131回「技術漏洩で東芝に訴えられた元サンディスク社員。東芝、サンディスクは韓国のハイニックスを提訴」
配信日:2014年3月23日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週のメルマガは元サンディスク社員が韓国のSKハイニックスに技術漏洩させた事件を振り返る。この事件は東芝とサンディスクどちらも被害者となっている。 韓国のSKハイニックスの技術が元社員がもたらしたものなら、一連のDRAM価格の暴落はこの元社員が原因で引き起こされた可能性が高い。つまり、その技 術の価値は億単位で済まないということになる。
これは軽く見積もっても兆単位の賠償が要求されるだろう。当然、SKハイニックスが払えるような金額ではないので、SKハイニックスは裁判の結果次第では倒産することになる。では、記事のチャートを張る。
記事のチャート
東芝の技術漏洩容疑、元サンディスク社員を逮捕→SKハイニックスのNADN型フラッシュメモリー開発→東芝とサンディスクがSKハイニックスを提訴→今週の韓国市場
東芝の技術漏洩容疑、元サンディスク社員を逮捕
東芝の半導体メモリーに関する研究データが韓国企業に漏れていた問題で、警視庁捜査2課は13日、東芝の業務提携先である半導体メーカー「サンディスク」の元技術者、杉田吉隆容疑者(52)=北九州市=を不正競争防止法違反(営業秘密侵害)容疑で逮捕した。
杉田容疑者は、サンディスクの技術者として東芝の四日市工場に勤務していた2008年ごろ、東芝の営業秘密であるNAND型フラッシュメモリーの研究デー タを記録媒体にコピーして持ち出し、韓国半導体大手「ハイニックス半導体(現・SKハイニックス)」に提供した疑いが持たれている。
NAND型フラッシュメモリーは1980年代に東芝が開発。スマートフォンなどでデータを保存するのに使われている。
(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1301Z_T10C14A3000000/)
2008年頃といえば、今から6年前ということになる。東芝のNAND型フラッシュメモリーが登場したのは、1987年に東芝に在籍していた舛岡富士雄さんが開発した。彼がNAND型フラッシュメモリーの父ということになる。
NAND型フラッシュメモリーの用途は、デジタルカメラ用のメモリーカード、携帯音楽プレーヤー、携帯電話の記憶装置など様々なデジタル機器に使われている。そうした需要で、市場規模も拡大し、容量が大きいNAND型フラッシュメモリーも登場した。
では、SKハイニックスはいつ頃から、NAND型フラッシュメモリーを生産できるようになったのか。
SKハイニックスのNADN型フラッシュメモリー開発
>2003年NANDフレッシュビジネスに踏み出したSK Hynixは 2004年 2月 512Mb NANDフレッシュ製品開発に成功して 2005年二桁のマーケットーシェアを確保しました。集中的な研究開発と攻撃的なマーケティングを通じて短期間に眩しい成果をおさめたのです。<
(https://www.skhynix.com/ja/company/business.jsp)
このようなことが書いてあるが、2004年開発ということは20年近く遅れてようやく開発したわけだ。しかし、2013年にはなんと東芝に追いついている。それが次のニュース。
>SKグループに買収された後、大幅黒字を出しているSKハイニックスが、技術力でも世界 トップレベルであることを立証した。 SKハイニックスは世界で最も微細な16ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)工程を適用した64Gb(ギガビット)マルチレベルセル (MLC)NAND型フラッシュメモリーの量産に入ると20日、明らかにした。
今年6月に世界で初めて16ナノ工程を適用した第1世代の製品を量産したのに続き、今度はチップのサイズを小さくした第2世代の製品 の量産を始めたのだ。チップの大きさを縮小すれば、同じウエハーでもより多くのチップを作ることができる。それだけ生産性を高め、単価を低めることが可能 だ。
SKハイニックス側は「現在市場に出ている製品のうち最も容量が大きい128GbのNAND型フラッシュメモリーも開発を完了し、来年初め量産に入る計画」と述べた。<
(http://japanese.joins.com/article/582/178582.html)
これが2013年11月21日の記事である。20年近く遅れた技術が東芝と同レベルになったわけだ。つまり、この技術流出によってサムスン、ハイニックス などの韓国企業の技術レベルが格段に向上したことになる。だとすれば、このサンディスク元社員は、韓国企業からヘッドハンティングだけではなく、技術を盗 んでこいと言われた可能性がある。
その元社員が単独で盗んで技術を売り渡した可能性もあるが、それなら技術を巨額なマネーで売って大金を得たら、ハイニックスに社員として働く必要はない。もっとも、その好待遇も3年で首を切られるわけだが。
しかし、これによってサンディスク、東芝がどれだけの損失を受けたかは本当に計り知れない。さきほど兆単位と述べたが、これからの利益やサムスン・ハイ ニックスの現代のシェアを考えると10兆円越えても不思議ではない。サムスン・ハイニックスは技術を盗むので、研究開発資金などいらない。それが価格にも 転化されているわけだ。
もちろん、これはNAND型フラッシュメモリーだけではないだろう。東芝が証拠を掴んで提訴に踏み切れたから表沙汰になったと思われる。東芝の技術が過去に韓国企業に盗まれている事例は色々ある。
そして、よく考えると、日本企業の得意分野は韓国企業もなぜか得意分野となっているとことだ。そのため、競合が激しいという話だが、元々が日本企業の技術 が盗まれていたなら、このような産業構造も成り立つ。つまり、韓国の技術はほぼ日本からもたらされたものだということになる。
東芝とサンディスクがSKハイニックスを提訴
このような事実が世間に公された後、東芝、提携している米サンディスクがSKハイニックスを提訴した。その賠償金額は明らかになっていないが、1000億 円以上という。だが、NAND型フラッシュメモリーの需要は年々拡大しており、家電、エネルギー分野などが低迷している東芝にとって、NAND型フラッ シュメモリーが稼ぎだす利益が大きく占めている。つまり、主力製品として成長しているわけだ。
賠償金額がどこまで膨れあがるかは知らないが、東芝だけではなく、米サンディスクが訴えているところは注目だろう。ご存じの通り、韓国は米韓FTA協定を結んでいる。つまり、アメリカ企業はこのFTA協定によって、韓国から多額の賠償金を得ることが可能である。
しかし、いくらSKハイニックスが破綻しようが、広がった技術が戻ってくるわけではない。すでに、サムスンにも流出しているであろう技術データを元にして、一歩遅れて新しいNAND型フラッシュメモリーが開発されているのが現状である。
技術の流出というのはただ盗まれて終わりではなく、未来に渡って多額の損害を発生させる。しかし、取り締まる法律がその現状に追いついていない。もっと罰 則を厳しくして当然である。しかも、日本では、なぜか不正競争防止法が緩和されたりするのだが、これは韓国のパチンコマネー辺りが裏で動いていると思われ る。自民党にも売国議員が多数存在するわけだ。
今回の技術漏洩は氷山の一角である。韓国だけに限らず、日本企業の技術に対するガードが甘いということは何度も指摘されていることだ。法改正が進まない中、日本企業はしっかりとした技術漏洩防止の強化が求められている。
今週の韓国市場
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
17日 1927.53 1067.40 535.82 251.15 -2273億
18日 1940.21 1069.20 541.15 252.75 -1478億
19日 1937.68 1070,50 542.25 252.90 -719億
20日 1919.52 1076.20 541.79 249.75 -2110億
21日 1934.94 1080.30 546.81 251.65 -622億 ←ジャネット イエレン米国連邦準備制度(Fed)議長の早期金利引き上げ示唆発言
今週の予想レートは1060~1080だった。21日に一時的な1082ウォンまで下がったのだが、今週はずっとウォン安のターンと呼べるほど、ウォン安 が進行した。これもウクライナの問題がある程度影響している結果であり、現在のところ、アメリカとロシアはどちらも引く気を見せてはいない。戦争を避けら れたとしても、新たな対立構造が世界の市場にどのような影響をもたらすかを探るのは容易ではない。
ただ、アメリカがウクライナのために軍を動かすことがない以上は、ロシア有利で事が運ぶと思われる。それともう一つが、21日の早期金利引き上げ示唆である。アメリカの金利が上がれば、景気回復兆しなのでドル高となる。ドル高となれば、自然とウォン安になるわけだ。
これがいつかはわからないが、近いうちだとすれば来週もウォン安がある程度進むのではないか。予想レートは1070~1085というところだ。この辺りのレートは韓国企業にとって理想に近いレートなので、それが1090、1100になってもさほど問題にはならないだろう。
以上。今週はこれで終わる。さて、来週はアメリカの強い圧力によって安倍総理が韓国に譲歩して実現した日米韓の首脳会談がハーグで行われる。ウクライナ問 題や、北朝鮮関連といった軍事的な話題が中心となると思われるが、そこでどのような問題を話し合うかは今後、韓国経済でも重要だろう。そのため、来週はそ の首脳会談の内容と、そうなる前の経緯を特集する予定なので、楽しみにしていただきたい。
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