第137回「業績悪化のサムスン電子。サムスングループ全体の再編と医薬品分野への進出」
配信日:2014年5月18日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週の韓国経済は韓国よりも地位が上となったサムスン電子について特集する。
韓国政府の不当な為替介入で作られたウォン安と手厚い支援でサムスン電子は世界のトップ企業の仲間入りを果たしているわけだが、サムスンの商法は日本をはじめとする先進国から技術をパクリ、開発費を抑え、大量生産、低価格販売で市場を独占してきた。
その顕著な例がDRAM、液晶ディスプレーなわけだが、最近はスマートフォンでも同じことをしている。このような商法は市場を食い荒らし、後には何も残ら ないために、焼き畑商業と呼ばれる。つまり、サムスン電子のやりかたは自分たちが盗める技術がなくなれば、それ以上は上には行けないという致命的な欠点が ある。イノベーションを起こせない企業であり、最新の研究開発もしない。
このようなサムスン電子のやりかたは3800件を越える特許訴訟の数からして、すでに明らかである。実は、そのサムスン電子は今、岐路に立たされている。今回はそれを見ていく。では、記事のチャートを貼っていく。
記事のチャート
サムスン電子が立たされている3つの岐路→サムスングループの経営統合→医薬品分野への進出→今週の韓国市場
サムスン電子が立たされている3つの岐路
サムスン電子が岐路に立っていることを先ほど説明したわけだが、大きく分けると3つになる。
1.スマートフォン市場の飽和化、低価格化による利益の減少
2.サムスングループの経営統合
3.医薬品分野への進出
■スマートフォン市場の飽和化、低価格化による利益の減少
>[ソウル 29日 ロイター] – 韓国のサムスン電子 が29日発表した第1・四半期決算は、ディスプレー用パネル部門の低迷や高価格帯スマートフォン(多機能携帯電話、スマホ)の販売伸び悩みで、営業利益が2四半期連続で減少した。
サムスンは、ブラジルでサッカーのワールドカップが開催されると試合をスマホなどで視聴しようとする動きが出てくることから、第2・四半期はパネルやスマホの需要が上向くと予想している。
今月発売された新製品「ギャラクシーS5」については、販売が従来モデル以上に伸び、利益率も上がる、と同社幹部は4月半ばにロイターに語っている。
第1・四半期の営業利益は前年比3.3%減の8兆5000億ウォン(82億ドル)だった。自社予想は8兆4000億ウォンだった。
モバイル部門の利益は前年同期の6兆5100億ウォンから1.2%減少し、6兆4300億ウォンとなった。
パネル部門は、世界的な販売低迷を受け、前年同期の7700億ウォンの黒字から、800億ウォンの赤字に転落した。
半導体部門の利益は82%増の1兆9500億ウォン。パソコン用半導体需要の高まりに支援された。
同社は、ディスプレーと家電販売の回復に伴い第2・四半期以降、業績が大きく改善するとし「モバイル端末の新製品発売やブラジルのワールドカップ開催に伴い、高価格スマートフォンやテレビ用のディスプレー需要の増加を見込んでいる」と明らかにした。<
(http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPL3N0NL0TJ20140429)
確かにブラジルのワールドカップで家電需要は見込めると思うが、スマートフォンの高機能で日本や米アップルと競り合うことが出来るかは疑問に思う。
もし、ギャラクシーシリーズの性能が良ければ、日本でもそれなりに受けいれられたはずなのだが、そんなことはなかった。ただでもいらない。
DoCoMoが一生懸命に頑張ったが、最後はiPhone導入を決定して、ギャラクシーそのものはすでにいらない子扱いである。新作のギャラクシーS5の 売れ行きは好調らしいのだが、目新しい機能がないのに、高機能とは言えないだろう。iPhone6が発表されたら流れは変わると考えている。
もう一つ気になるのがスマートフォン低価格化である。日本でもイオン、ヨドバシカメラといった企業が格安のスマートフォンを販売し始めている。これが良い かどうかはべつとして、世界的に中国企業が低価格のスマートフォンを大量生産、大量販売しているので、サムスン電子のやりかたをそのままコピーされた形で ある。サムスンにとって怖い存在になるのは目に見えている。
サムスン電子はスマートフォン市場において岐路に立たされている。市場の飽和化による利益減少は始まったばかりで、さらに中国企業の猛追とシェア争いは激化している。モバイル分野だけで営業利益の8割稼いでいるわけなので、ここが転ければサムスン電子は一気に崩壊する。
サムスングループの経営統合
>韓国証券取引所によると、上場企業(12月期決 算)494社全体でみてサムスン電子は営業利益で36%、純利益ではほぼ半分を占めているという▼サムスン電子がグループ64社の中核であるとともに、韓 国経済の旗艦でもあることは疑いない。
そのサムスンが、グループの再構築に乗り出した。サムスンSDIが第一毛織を7月までに吸収合併、総合素材・部材企業を誕生させる▼サムスンSDIは収益性、第一毛織は成長性という”悩み”を一挙に解消させるのが狙いらしい。
素材と部材の相互補完を最大化、モバイル機 器から自動車、エネルギー関連まで広範な領域での事業展開につなげる▼一方、この発表から日を置かずして、サムスン総合化学によるサムスン石油化学の吸収 合併計画を公表した。
サムスン石油化学は中国勢による過剰投資で窮地にあるテレフタル酸を手掛けており、その救済が必要と判断したようだ。もっとも、仏ト タルとの合弁石化事業も安穏とはしていられない▼関係者が注目したのはサムスン創業の第一毛織の”処遇”だった。
どうやら実質的な持株会社で復活するらしい。サムスンの”第二創業”を印象づける話だが、韓国経済の再興とも重ねて考えても面白い。
(http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2014/04/08-15303.html)
サムスングループの再構築が年々、加速しているのだが、事業再統合にはスリム化以外にも、もう一つ重要な意味がある。それは後継者問題である。6日前、サムスン電子 の李健熙(イ・ゴンヒ)会長が脳梗塞で緊急手術を受けた。容態は安定したようだが、いつまでも会長を続けることは出来ないだろう。なら、史上稀に見る骨肉争いが待ち構えていることになる。
副会長が次期、会長になるというが、それほど簡単に事が進むとは思えない。事業再編をやっているのはそういった意味での莫大な遺産を分割しやすくしているように見える。
現時点で、サムスングループが滅びる可能性が高いのは骨肉争いなので管理人はわりと注目している。
医薬品分野進出
サムスン電子にとって、市場が飽和していく中で、スマートフォンの次の主力製品を造り出すことが急務となっている。そういった意味で、サムスンはコピー 機、デジタルカメラといった分野に進出するために、日本企業の技術を買収しようとした。ただ、それが必ずしも上手くいっているわけではなさそうだ。そし て、もう一つが医薬品である。
サムスン電子が医薬品分野進出とか述べている時点で、爆発するスマートフォンのイメージがあれば「あり得ない」としか言えない。
>韓国のサムスン・グループは、電子機器部門のサムスン電子を米アップルを超える販売世界一のスマートフォンメーカーに変身させた。次に狙いを定めているのは医薬品業界だ。
韓国最大の複合企業であるサムスンは、バイオ医薬品に少なくとも20億ドル(約2040億円)を投入している。その一つが成長著しい分野であるバイオシミラー(特許満了を迎えたバイオ医薬品の安価な後続品)だ。
年間売上高が約3270億ドルのサムスンは、バイオテクノロジー業界で一大勢力になることを目指す。同業界全体の売り上げは5年以内に2200億ドルを超 えると見込まれている。電子機器業界が飽和状態に達する中、サムスンの李健煕(イ・ゴンヒ)会長はグループの成長を支えられる可能性のある新たな分野への 投資を進めている。
サムスン・バイオエピス部門のクリストファー・ハンソン・コ最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「われわれは はまだ駆け出しの段階にある」と指摘。「当社はサムスンのグループ会社であり、参入したどの分野でも首位になることが使命だ。そのため、われわれの長期目 標は世界有数の医薬品会社になることだ」と述べた。
この計画の中心にあるのがバイオシミラーだ。コ氏によると、サムスンは2016年に欧州で同社初のバイオシミラーとなるアムジェンの関節リウマチ治療剤 「エンブレル」の後続品を発売し、17年には米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の自己免疫疾患治療薬「レミケード」のバイオシミラー版を投入す る計画だ。
サムスンはファイザーやアムジェンなどと競合することになるほか、規制上の障害や未開拓の市場といった問題にも向き合わなければならない。欧州と日本はバ イオシミラーを認可しているものの、米国はまだ具体的な指針を制定していない上に、バイオシミラーを全く許可していない。<
(http://www.sankeibiz.jp/business/news/140514/bsk1405140500008-n2.htm)
サムスンがいつアップルに勝てたかは知らないが、この医薬品分野進出には20億ドルかけている。ただ、これって欧州、アメリカと結んでいるFTAに深く関わると思われるし、医療分野ほど怖いものは中々ないことをサムスンは知っているんだろうか。
ほとんど医療特許は先進国が独占しており、新薬の開発などを簡単に行えるものでもなく、何より、スマートフォンと違い、人体に影響するので国の許可が取りにくい。このように考えると、医療分野進出はアキレス腱になる可能性が高い。
今週の韓国市場
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
12日 1964.94 1024.40 551.40 255.75 -1034億
13日 1982.93 1022.10 557.16 259.30 2128億←100円当り韓国ウォン価値999.41ウォン…4ケ月ぶりに’三桁’
14日 2010.83 1027.90 560.30 263.10 3414億←強度な為替介入
15日 2010.20 1025.20 561.75 262.80 3318億
16日 2013.44 1024.00 557,59 262.90 4723億←外国人売買は昨年10月23日(5920億ウォン)以後最大値。
今週の予想レートは1020~1030だった。
1030ウォンを突破してから、何回か為替介入が行われているのだが、それでも1030ウォンに戻す力はないようだ。ただ、14日に突然、外国人の KOSPI買いが加速して、2000台を回復している。さらに、15日、16日も続いており、16日には4723億ウォンと昨年の10月以後の最大値を記 録した。これについては難しい。とりあえず、この現象について調べてみた。
>キム・ハクキュンKDB大宇証券投資戦略チーム長は”外国人買い傾向が大きくなって1分期実績発表が終わろうとして外国人需給が証券市場変動を左右する 主要因に再び浮び上がった”と明らかにした。ファン・ソンテク トラストン資産運用社長は”最近韓国証券市場に関心を持つ外国人投資家が多い”として”株価が相変らず低評価されていて企業実績も改善される兆しを見せて 韓国市場を肯定的に見ているようだ”と伝えた。<
ウォン高なのに企業実績が改善される。うーん・・・・・・首をかしげたくなる。むしろ、証券市場に関心を持つ外国人投資家は昨年より減っているのだが、し かも、株価は低評価されているという。韓国市場を肯定的に見ているのか・・・外国人投資家の動向については難しい。ただの一時的な流行なのか、それとも続 くのか・・・しかし、それほど楽観的な状況ではないだろう。
来週の予想レートは1020~1030にしておく。
以上。今週はこれで終わる。来週は韓国の最新造船事情について見ていこうと思う。気になるニュースとしては韓国の造船は日本に抜かれて世界第三位となったそうだ。数で勝負しない日本に負ける韓国。一体何が起きているのか。
読者様の講読に深く感謝する。これからも温かい応援の程をよろしくお願い致します。 b