第148回「岐路に立つサムスン電子。今後の問題点は配当を増額できるか」

第148回「岐路に立つサムスン電子。今後の問題点は配当を増額できるか」

配信日:2014年8月10日

最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)

今週のメルマガはサムスン電子特集である。サムスン電子が7月31日に発表した4-6月期の決算は、営業利益が前年同期比24%減と、過去2年の中では最 悪な結果となったわけだが、1年半前からこのような状態になるというのはある程度は予想されていた。このような理由が報道されているので、株主がサムスン 電子を見限るのは業績悪化だけが原因ではないと管理人は考えている。そこで、今回はサムスン電子の今後を見る上で重要なキーワードを解説していく。では、 記事のチャートを張る。

記事のチャート

中国企業の追い上げ→配当の増額は期待出来るのか→相続税問題→韓国政府、サムスン電子の余剰金に新税→今週の韓国経済

中国企業の追い上げ

2014年7月29日、米調査会社IDCが29日発表した4~6月期のスマートフォンの世界出荷台数調査で驚くべきことがわかった。

まず。中国勢上位2社(聯想グループ、華為技術)のシェアが計12・3%となり、米アップルの11・9%を上回った。世界で3位の華為技術の出荷台数は前年同期に比べてほぼ倍増し、4位の聯想グループも38・7%伸びたようだ。シェアを並べておくと以下の通り

1位 サムスン電子 25.2%(-7%ダウン)
2位 米アップル   11.9%
3位 華為技術
4位 聯想グループ

このようになっている。3位と4位を合わせると中国企業が米アップルを抜いたことになる。そして、アップルのほうはシェアを伸ばしたが、サムスン電子は シェアを中国企業に奪われたことになる。これに危機感を抱かない投資家は存在しない。こうなってくると後数年で中国企業とサムスン電子のシェアは入れ替わ る恐れがある。米アップルはブランド価値が高い商品を提供しているので、10%シェア台を維持できるだろう。しかし、サムスン電子のスマホは低価格、低品 質であるため、中国企業がそれよりも安い商品を大量生産していけば、いずれは勝てなくなる。

実際、これはサムスンが日本メーカーに液晶テレビ、DRAM、造船などで行った焼き畑商法である。しかし、資産規模が大きい方が市場では圧倒敵有利なの で、中国企業2社にサムスン電子が勝てる見込はない。中国のGDPは統計を信じれば世界第2位であり、韓国のGDPは世界第14位である。その中でサムス ン電子が韓国のGDPの13%の資産規模を誇っても、勝負は見えている。

サムスン電子にとって中国企業の台頭は頭の痛い問題となる。だが、それはサムスン電子だけの問題ではない。米アップル、日本のシャープ、SONYといった 企業も、この先、中国企業の圧倒的な価格差のスマホに対抗しなくてはならない。もっとも、管理人は充電しただけで爆発するスマホを使うつもりはないが。

配当の増額は期待出来るのか

サムスン電子に期待する投資家は今後、株価は低迷すると睨んでいる。それは市場シェアを奪われることが明らかであり、サムスン電子に期待の新製品がないた めである。しかし、株主が期待するのは配当の増額である。この配当の根拠については株価収益率(PER)を基本参考にする。

PERとは、“会社の利益と株価の関係”を表していて割安性を測る指標のこと。一般的には、PERが低ければ低いほど、会社が稼ぐ利益に対して株価が割安 であるといわれている。計算式は簡単で、時価総額÷純利益である。例えば、PERが5倍であれば、純利益の5倍までは買われていることになる。PERにつ いてはIT関連株では非常に高いことが多いので、サムスンの株価収益率(PER)は、今年の予想利益で6.9倍、来年の予想利益では6.4倍となってお り、はっきり述べてサムスン電子のPERは低い。なぜなら、アップルでもPERは15.302となっており、およそ15倍である。

なら、サムスン電子は今後,配当を増やせばPERも上昇するわけだが、実はそうも行かない状況が売上低迷以外にも二つある。それが相続税問題と韓国政府が新設する余剰金への課税である。

相続税問題

過去のメルマガでサムスン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長が倒れたことを知らせたと思うが、未だに発作を起こし、昏睡(こんすい)状態にある。そのため、 サムスングループではその会長の引退に伴う企業の再編が進んでいる。これは相続税の問題が大きいためである。同会長は、同族持ち株企業とともに、サムスン の最大の株主なので、相続の分配で問題が起こる。以下、WSJの記事によんでいただきたい。

>長男で副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が遺産を相続した場合、相続税は遺産の半分、60億ドル超となる見込み。税額は同会長死亡時のサムスンの株価に 基づいて決定される。サムスンが増配や自社株の買い戻しを実施すると、時価総額は増加する可能性が高く、副会長の支払う税額も増加する。ただし保有現金へ の新税により、サムスンが相続税減額のために増配を遅らせる期間が長いほど、同社の現金保有に対する課税額が増えることになる。

最後の記事については、韓国の新しい税の話になるのだが、次で補足する。

つまり、サムスン電子の会長の遺産相続の展開次第では、今後、配当金の増額は見込薄ということになる。そのため、株主としてはしばらく様子見の段階であり、それが株価低迷にも影響する。だが、遅かれ速かれ,この問題は対処する必要がある。

韓国政府、サムスン電子の余剰金に新税

>企画財政部(省に相当)幹部は28日、企業が投資も配当も行わず、社内に資金を貯め込む内部留保に課税を行う「企業所得還流税制」の税率を10%に決定したことを明らかにした。大企業が対象だが、業種や利益規模に関係なく一律適用される。

関連法案は来週、政府・与党による協議を経て、国会に提出される。可決されれば、来年発生する企業の利益から適用される。企業が利益を2016年末 までに投資などに充てなければ、17年から課税対象となる。例えば、A社が2015年に1000億ウォンの利益を上げ、16年末までに500億ウォンを投 資、配当、賃上げに充て、500億ウォンを内部留保した場合、17年に内部留保分の10%となる50億ウォンを課税する仕組みだ。

韓国政府は企業が利益の60-70%を配当や投資に充てるよう促す方向で税制を設計した。

政府は海外投資、税金逃れ目的に企業の合併・買収(M&A)を行う行為、非業務用不動産の取得などは投資として認めないことも決めた。(一部省略)<

(http://www.chosunonline.com/svc/auth/index_login.html?contid=2014072900515&code=news)

まさにサムスン電子の巨大な内部留保の未来永劫、手に入れるために作られたような法律である。

サムスン電子は内部に時価総額の30%に相当する600億ドルの現金を保有している。これはGoogleの保有額を上回る。もし、配当金の増額がなけれ ば、来年はさらに増えるわけだが、韓国政府の税金によって、一部がもっていかれる。つまり、現状で60億ドルである。どう見ても二重課税な気もするが、韓 国政府の財政に余裕がないわけだ。大企業の内部留保に目を付けての財政確保。わりと効果はありそうだ。また、具体的な税収増加を分析した記事にはこのよう に書かれてある。

>大信証券はこのような内容の企業所得還流税制が導入されれば昨年実績基準として配当金額が合計3兆4161億ウォン増えると分析した。時価総額1兆ウォ ン以上企業の中で純利益対比投資比率が60%にならなくて、現金配当性向が20%を下回る企業が不利益を避けるために現金配当性向を20%に増やすという 仮定の下に導き出された結果だ。増える配当金は全体企業の既存配当額12兆1332億ウォン対比28.2%に該当する。コスピとコスダック合計基準として 現金配当性向は16.4%から21.0%に、現金配当収益率は0.9%から1.2%に増加すると分析された。<

もっとも朴槿恵政権で決めたことが次の政権に引き継がれるとは限らない。任期が終わるまでの短い時間になる可能性もあるだろう。

今週の韓国経済

日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)

04日 2080.42 1033.50 549.61 270.00 2012億←年金買い
05日 2066.26 1028.20 547.75 268.50 338億
06日 2060.73 1033.70 548.43 267.70 632億
07日 2054.51 1037.60 547.11 266.25 -298億
08日 2031.10 1036.50 544.24 263.10 -2052億←サムスン外国人売りで3%下落

今週の予想レートは1030から1045だった。一時的にこのレートを突破したこともあるのだが、ウォン安傾向となっている。ただ、1030ウォン台を維 持しているので、このまま今週も1030ウォン台の攻防戦が続くと思われる。また、アメリカのオバマ大統領が空爆を示唆したことで、ドル安傾向であること も考慮しないといけない。ウォン高になるというよりはドル安圧力が強いと見ておくといいだろう。空爆をするかしないかは、まだまだわからないがそういった 意味では市場は様子見ではないだろうか。

後、8日にサムスン株が投げ売りされている。そのおかげで、KOSPIも下がっているわけだが、まだ外国人が売り攻勢かどうかは判断が難しい。来週の予想レートは1030~1045にしておく。一気にウォン高になる見込は少ないが、一時的に1030以下もありえるだろう。

以上。今週はこれで終わる。来週の予定だが、今、選挙を終えて朴槿恵政権が政治と経済で大きく揺れ動いている。さらに、企業の景況感は低い。未だにセウォ ル号沈没事故での影響からは抜け出せていない。そのため、金利の引き下げとセウォル号沈没事故後の内需について特集しておくと今後の経済動向が掴みやすい だろう。もっとも9月に入るまでは市場は静かだと思われるが。

読者様の購読に深く感謝する。これからも温かい応援のほどをよろしくお願い致します。

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