第154回「法案処理がゼロ。未だにセウォル号の亡霊が韓国の国会を縛り続ける」
配信日:2014年9月28日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週のメルマガは混迷する韓国の国会を特集していくわけだが、そもそも,どうして韓国の国会は法案処理がゼロという異例の事態ここまで進行しているのか。 1番の問題はセウォル号の特別法案なわけだが、これが与党と野党の対立を生んでいる。だが、実は野党が本気でセウォル号の特別法案を支持しているかどうか というとそうでもない事情が見えてくる。
しかも、問題は国会が機能しなければ、様々な経済対策法案が通過しないので、韓国経済が人質にされてしまってい る。こうした対立の本質は何なのか。それでは記事のチャートを張る。
記事のチャート
国会法案処理実績が5月2日以降、130日以上「ゼロ(0)」→<セウォル号>朴大統領「与野党の2次合意案が最終決断」→9分半の本会議’法案処理30日に延期→今週の韓国経済
国会法案処理実績が5月2日以降、130日以上「ゼロ(0)」
これは9月11日(木)の中央日報の情報からだが、この時点で国会法案処理 実績がゼロである。しかし、実際はここから2週間ほど経過しているが、未だに一つも通っていない。そして、国会の外では国会を解散せよという民心が起こっ ているという。だが、与党は野党の主張をこれ以上は聞き入れないと述べている。この辺りの様子がわかるのが次の記事。
>セヌリ党 は15日、国会本会議の開催に関連して鄭義和(チョン・ウイファ)国会議長を圧迫 した。金栄宇(キム・ヨンウ)首席報道官は「本会議に係留中の民生法案に何の罪があるのか」として「与野党が本会議の日程に合意できない場合、国会議長の 職権で本会議を開くことができる」と強調した。15日の本会議を単独でも開催して民生・経済法案を処理するということだ。
一方、新政治連合は「セウォル号特別法が最も重要な民生法案」としながら秋夕(チュソク、中秋)連休の前と同じような主張を繰り返し た。兪銀恵(ユ・ウンヘ)院内報道官は「朴槿恵(パク・クネ)大統領と158議席の巨大与党の不通と意地が、政局の異常進行の主犯」としながら「セウォル 号と民生を両者対立の構図にする非倫理的な形態を中断すべきだ」と話した。朴範界(パク・ポムゲ)院内報道官はセヌリ党の本会議開催の主張に対して「国会 法上、国会議長の職権使用は原則的に天変地異・非常事態・与野党合意・迅速処理対象案件のほかには禁止されている」として「現在、本会議に係留中の93法 案は法司委を通過したが、これには該当しない」と主張した。
しかし新政治連合内部ですら「これ以上国会日程を先送りするのは無理」という意見が出てきた。 <
(http://japanese.joins.com/article/927/189927.html?servcode=200§code=200)
このようにセウォル号特別法を巡って、与党の野党の対立が続いている。けれども、これは日本の民主党と同じである。少し,昔の話になるがリーマン・ショッ クが起こり、麻生政権が経済対策をしようとしたときに法案を通過させないために民主党はひたすら邪魔をした。あれで、日本の経済対策がかなり遅れてしまっ て嘆いていたことがある。つまり、セウォル号特別法は野党にとって国民の理解が得られやすい政略道具なのである。
けれども、法案が全く通らなければ、重くのしかかるのは韓国経済の悪化なので国民に負担が増すだけという悪循環である。この国会の対立でクローズアップさ れるセウォル号特別法にも捜査権・起訴権といったかなり強い権限を要求しているので、これが通れば散々利用されることになるのを与党は恐れている。大統領 にまで捜査が及ぶとなれば、管理人のような部外者には面白いが、必ず悪用されるはずなので韓国社会にはマイナスとなろう。そして、16日、朴槿恵大統領が こう述べている。
>朴大統領はこの席でセウォル号特別法と関連し、「起訴権・捜査権問題は司法体系と国家の基盤が揺らぎ、議会民主主義も失われてしまう大きな問題であるため受け入れることはできない」と明らかにした。これとあわせて与党主導の民生法案処理も要望した。<
これが大統領が法案を受け入れない理由なのだが、朴槿恵大統領が急に攻撃的に移ったことにも理由がある。それが既に特集した産経新聞ソウル支局長に出頭命令での証言で空白の7時間に何をしていたのかという疑惑がある程度、解消されたからだという。
確かに噂となった人物は証言台に立って,彼がその日、朴槿恵大統領とは会っていないことは向こうは確認したようだが、それが空白の7時間の疑惑を解決した とは思えない。別の誰かと会っている可能性があるわけだ。そもそも、7時間何をしていたのか。全くもって明らかにされていない。また、朴槿恵大統領が攻撃 的になったことで、対立はさらに深まる。
<セウォル号>朴大統領「与野党の2次合意案が最終決断」
大統領は閣 僚会議後、セヌリ党の金武星(キム・ムソン)代表、李完九(イ・ワング)院内代 表や朱豪英(チュ・ホヨン)政策委議長、金在原(キム・ジェウォン)院内首席副代表と会った場でも2次合意案が交渉の最終案だという点を確認した。朴大統 領は「特検法で与野党が推薦権を持っているが、それでもさらに譲歩してどうにか成功させるために極端なところまで行きながら(与党の推薦権を)譲歩したの ではなかったか」として「ところが2回も合意したことが覆ったために国会も麻痺して野党もあのような異常な状況になった」と指摘した。
それと共に「国民は民生を解決してほしいと国会ばかり眺めているが、ずっとこのような形で行くことになると本当に胸が苦しい。与党でも立ち上がってどうにかして主導的に問題を解決するために先頭に立たなければならないのではないか」と話した。
これに対し金武星代表は「助けになれず大変申し訳なく、国民にとても申し訳ない気持ち」と答えた。金代表は会合の中で「大統領の言葉 はよく分かるが、今回(野党なしで)断行すれば今後、大統領が望むこともうまくいかない恐れもある」として「本当に通過させなければならない法案が通過で きない可能性もある」と憂慮を示したという。これに対し朴大統領は「それでも基盤が丈夫でなければならない。基礎が丈夫な上でこそほかの事を成すことがで きる」として強い意志を表わすと金代表もうなずいたという。李完九院内代表は「多少難しくても国会を空転しておくわけにはいかず、断固たる立場で(民生法 案を)処理するつもり」として単独処理の方針を示唆した。
新政治民主連合は強く反発した。柳基洪(ユ・ギホン)首席報道官は記者会見で「立法権者である国会が、必要ならば法律で定めて捜査権 と起訴権を付与できるということに数多くの法学者と法律家が賛成している」とした。歳費発言については「朴大統領は『基礎年金・高校無償教育公約』を守ら ずにいるが、新政治連合は大統領の月給をどうこう言っていない。10月維新で国会を解散した朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の冷気が汝矣島(ヨイド)まで 感じられる」などと反論した。セウォル号惨事家族対策委もこの日、国会で記者会見を行って「大統領とセヌリ党が偽りの理由を前面に出して聖域なき徹底した 真相究明を回避している」としながら「結局、惨事以後に明らかにした『国家改造』構想は、聞こえの良いスローガンに過ぎなかった」と批判した。
(http://japanese.joins.com/article/167/190167.html?servcode=200§code=200)
かなり長いのだが切るところが難しく全文掲載した。セウォル号の疑惑がある程度晴れた?朴槿恵大統領は他の民政法案を与党だけで単独処理する方針を示唆し た。しかし、野党は強く反発した。このような状態となり、では単独で処理したかというと未だにしていない。そして、さらに朴槿恵大統領の独断に疑問を持つ 与党まで現れる。
>24日午 前、セヌリ党の最高・重鎮連席会議では政治的に敏感な発言があふれた。まず李秉錫 (イ・ビョンソク、4選)議員が朴槿恵(パク・クネ)大統領の海洋警察庁解体方針にブレーキをかけた。李議員は「セウォル号事件1つだけで海洋警察を完全 に解体するということが、国民は十分に納得できるのか公論の場を作る時になった」と主張した。
李議員は「一時的に国民の怒りを買ったからといって海洋の主権を守る機関を一日でなくすのは思慮深くない決定だという疑問を買う恐れがある」として「銃器 乱射やユン一等兵死亡事件が起こったからといって軍隊を解体できないことと同じだ」と話した。海洋警察の解体は朴大統領が5月19日に対国民談話で発表し たセウォル号後続対策の中の核心だ。いわゆる「VIP(大統 領)関心事項」について与党の重鎮が反旗を翻したのだ。
それだけではない。鄭柄国(チョン・ビョングク、4選)議員は公務員の年金改革などを取り上げて「社会的波紋が大きく賛否の世論が鋭 い懸案について、押しつけ型の政策推進は与党の独善に見える恐れがある」と批判した。沈在哲(シム・ジェチョル、4選)議員は増税論争について「政府が 『増税はない』という朴大統領の発言に足かせをかけられて、増税をするにも増税ではないというような荒っぽい弁解を続けていては国民の信頼だけがさらに落 ちる」と指摘した。
偶然にも李秉錫、鄭柄国、沈在哲の3人の議員は親李明博(イ・ミョンバク)系で、朴大統領と近いとはいえない。だとしても党の公式会議で青瓦台・政府の主な政策に対してこうした苦言がリレー式に出てきたのは前例がない。<
(http://japanese.joins.com/article/561/190561.html?servcode=200§code=200)
セウォル号沈没事故で恥をさらした海洋警察を解体すると宣言した朴槿恵大統領。これに反発する議員が与党に出てきた。はっきり言えば、海洋警察を解体した ところで、とかげの尻尾切りである。セウォル号沈没事故でもっとも責任があるのは日本やアメリカ、他国の支援を断った朴槿恵大統領であるのは言うまでもな い。
当時、管理人は大統領のプライドのために300人の生徒が犠牲になったと述べたが,実際はその通りだった。あの時、空白の7時間は知らなかったが、彼女が 事故当日に何をしていたかは明らかにすべきだろう。それが国のトップとして、正しい指示が出来ていないなら、責任を問われるのも当たり前である。セウォル 号沈没事故は韓国社会の負の一面が凝縮されて起こった人災である。その負の一面が大統領にも会ったわけだ。
また、26日にセウォル号の遺族が捜査・起訴権の代案を要求している。もっとも、この代案でも根本的なところは変わっていないので歩み寄りは難しいだろう。
9分半の本会議’法案処理30日に延期
合計91個の法案処理のために開かれた26日国会本会議が一件の法案も通過させられないまま結局来る30日に延期になった。
チョン・ウイファ国会議長は野党が参加しない中で開かれた本会議で国政監査日程などに対する与野党の早急な合意を
注文して開会9分で散会を宣言した。
チョン議長はこの日の会議で”新しい政治民主連合指導部から本会議を数日だけ延期してほしいという要請があった”
として”今週末だけでも党の総意を集めて整理できる時間をくれと言う要請で、真正性を確認した”と延期理由を明らか
にした。 引き続き”野党が交渉結果を二回も翻意したことに対して与党で深刻な信頼の問題を提起するのをよく知っている”
ながらも”無信無立の正しい意味を再確認してもう一度努力することを望む”と与野党に頼んだ。
これに伴い、すでに運営委を通過した’2014年国政監査定期会会期のうち実施の件’と本会議に係留された91個の法案の
処理は30日に延ばされた。 チョン議長は常任委に係留中である43個の法律案も与野党が早く議論して本会議に載せる
ことを要請した。
しかし法案処理のために単独本会議を辞さないセヌリ党はチョン議長の一方的決定に反発して30日本会議が開かれる時まで
セウォル号特別法懸案を含んだ野党とのすべての交渉を拒否する意向を明らかにした。
(http://news.mk.co.kr/newsRead.php?year=2014&no=1244178)
このように30日まで延期となった。だが、30日で全て法案処理が出来るかと言えば無理だろう。結局、対立構造は何も埋まっていないし、民生法案が通過し ないなら、経済対策も口だけである。こうした中、韓国経済は確実に悪化しているわけだ。しかも、韓国経済の中心となるサムスン電子と現代自動車に黄色い信 号が灯っている。これが次のメルマガ特集のテーマとなる。
今週の韓国経済
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
22日 2039.27 1040.70 577.35 261.35 -2316億
23日 2028.91 1040.00 575.56 260.50 -2443億
24日 2035.64 1039.90 580.42 260.40 -160億
25日 2034.11 1042.60 577.48 260.20 -1370億
26日 2031.64 1044.40 577.66 259.50 -343億
今週の予想レートは1035~1055だった。動きがあるかもしれないので多めに取ったのだが、終わってみれば数ウォンの動きであった。ただ、これは終値 だけの動きであり、実際は1038ウォンまで上がっており、1044.9ウォンまで下がってる。それでもいつもより動きは控えめである。ただ、外国人売買 を見ていると全て投げ売りとなっているのは注目だろう。また、先物がどんどん下がっている。これについても注目しているのだが、それよりもKOSPIに限 界が来ている感じだ。一応、仁川アジア大会が韓国で開催されているわけだが、市場の反応は薄い。
では、今回の予想レートだが、1035~1050というところだ。実際、1045ウォンの突破は難しいと考えているが、突破したら1050まで下がることもあり得る。
また、韓国経済と異なるがアメリカの景気回復が順調のようでダウがだいぶ戻って来ている。こうした意味では韓国の輸出には良い材料であろう。しかし、問題 はサムスンの業績である。これは次回に特集するが、アップルの新型iPhoneは既に世界で1000万台の販売数突破した。対するサムスンのスマホは中国 勢の台頭で苦戦を強いられている。このような状況の中、サムスンの業績発表に世界中が注目している。
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