第168回「スイスフランが急騰で世界経済が大混乱。韓国市場はウォン高、KOSPI安に!」
配信日:2015年1月18日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
今週の韓国経済は予定を変更して、スイスフラン高騰により、世界経済が大混乱に陥った ニュースを特集していく。スイスフランが急騰した理由は、スイス政府が為替防衛を止めると発言したことである。スイスは12000付近で無制限の為替介入 を行うと宣言していたため、これ以上のスイスフラン高にはならなかった。
ところが、止めると発表した途端、わずか20分で、ユーロ/スイスフランは30%急上昇するという歴史的な値動きとなった。これを円に直すと100円だっ たのが、20分後に130円になったと考えるとわかりやすい。さらに、スイス市場は10%急落。世界市場はスイスフランショックとなり、ダウ、日経平均は 大幅に続落。韓国のKOSPIも1900台を割ってしまい、ウォン高もいっそう加速。では、前置きはこれぐらいにして記事のチャートを張る。
記事のチャート
スイスフラン、対ユーロで一時30%上昇 フラン上限廃止で→スイス株式市場が10%急落、フラン上限撤廃を嫌気→スイスフラン急騰でクリスマスが再び!→アルパリ破綻→欧州危機が加速→
スイスフラン、対ユーロで一時30%上昇 フラン上限廃止で
>[ロンドン 15日 ロイター] – 15日の欧州外為市場で、スイスフランが対ユーロで一時、およそ30%上昇した。スイス国立銀行(中央銀行)は15日、スイスフランの対ユーロの上限、1 ユーロ=1.20フランを廃止する、と発表した。 スイスフラン は一時、1ユーロ=0.8052フランまで上昇。その後は上げ幅を縮小した。対ドルでも20%超上昇した。 <
(http://jp.reuters.com/article/stocksNews/idJPL3N0UU3ZA20150115)
この歴史的な動きは金曜日だったわけだが、その波及効果は凄まじかった。次は、スイス市場のニュースを見て頂きたい。
[ロンドン 15日 ロイター] – スイス国立銀行(中央銀行)がスイスフランの対ユーロ上限を撤廃すると発表したことを受け、15日のスイス株式市場 は10%以上急落、時価総額およそ1000億ドルが吹き飛んだ。
スイスフランは上限廃止を受け、一時30%近く急騰。売りは他の欧州株式市場にも波及しており、FTSEユーロファースト300指数 も1.3%下げている。スイス市場では、時計大手スウォッチ 、時計ブランド「カルティエ」などを傘下に持つリシュモン 、銀行大手UBS などが軒並み10%前後急落。
スウォッチのニック・ハイエック最高経営責任者(CEO)は、中銀の決定はスイス経済への「津波」になると発言。セントラル・マーケッツ・インベストメント・マネジメントのトレーディング部門トップ、ダレン・コートニークック氏も「大虐殺だ」と述べた。
(http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0UU4GX20150115)
スイス市場は10%以上も急落するという地獄図のような展開。時価総額1000億ドルも吹き飛ぶ。輸出業者の株価は酷い有様だったようだ。スイスフラン高 になれば、輸出業者にとっては辛い展開だ。今まで、保護してきたのをスイス政府はなぜ打ち切ったんだろうか。しかし、為替というのは大損する人もいれば、 30%の貨幣価値上昇の恩恵を受ける人もいる。それがスイスフランで給料を得ている人たちである。このニュースも中々興味深い。
スイスフラン急騰でクリスマスが再び!
> 「まるでクリスマスがまた来たみたい」――スイス・ジュネーブ(Geneva)中心街の外貨両替所にできた長蛇の列に加わりながら、病院職員のバネッサさ ん(28)は興奮もあらわに言った。 スイス各地では15日、高騰するスイスフランを外貨に両替しようと両替所に人々が殺到した。
スイス国立銀行(中央銀行)はこの日、3年にわたって維持してきた1ユーロ=1.20フランの
対ユーロ上限を撤廃すると発表した。直後、スイスフランは30%近く上昇し、一時1ユーロ=0.8517フランを付けた。
「ニュースは朝に聞いた。とてもうれしい!」とバネッサさんが喜ぶのには、理由がある。
バネッサさんの勤務先はスイス国内の病院だが、住んでいるのは国外なのだ。 スイスで働きながら、フランスやドイツ、イタリアなどユーロ圏の近隣諸国に生活基盤を置き税金を納める労働者は、スイスに約28万人いる。
15日のスイスフラン高騰における最大の勝者は、こうした国境をまたいで生活する「フロンタリエ (国境在住者、越境通勤者)」たちだった。収入が一瞬にして30%も増えたのだ。 バネッサさんは「スイスフラン預金を全額ユーロに交換するべきかどうか」思案中だと語った。
■住民にも朗報、経済的には「大惨事」
一方、スイス国内の居住者たちの多くも、スイスフランの高騰に心を躍らせた。 海外で長期休暇を楽しんだり、近隣諸国の不動産を手頃な価格で購入したりできるようになるからだ。
「ユーロ圏への旅行が安くなる。フランスに別荘を買いたい人にとっても朗報だ」と、 資産管理業を営むシャルル・グトウスキ(Charles Gutowski)氏は話した。
だが、多額の外貨準備を保有するスイス中銀にとっては、フラン高騰は資産の減少を意味し、スイス大手企業も打撃を受けるだろうとグトウスキ氏は指摘。「多くの問題を引き起こすだろう」とも述べた。 スイス経済界は中銀の決定を大惨事と称している。
スイス銀行大手UBSは、この決定によりスイスの輸出高は50億スイスフラン(約6700億円)相当も目減りし、 経済成長を0.7%押し下げるだろうと予測した。
スイス時計メーカー大手スウォッチ(Swatch)のニコラス・ハイエック(Nick Hayek)最高経営責任者は、 スイス通信(ATS)に対し「言葉を失った」と語った。「スイス中銀が巻き起こしたのは津波だ」――同社の株価は15日、16.4%下落した。
(http://news.livedoor.com/article/detail/9682140/)
住民は大感激。大手輸出企業はスイス政府が津波を引き起こしたという。この天国と地獄のようなニュースに急激な為替暴騰の恐ろしさがある。スイスといえば 精密機械や観光業なわけだが、その2つが今後、低迷していくのが容易に予想される。しかし、これで喜ぶ住民は先見性がないといえる。なぜなら、スイス企業 の85%は海外輸出で儲けているからだ。
半年後辺りには企業の業績が軒並み下がる結果となり、失業する人も出てくるだろう。天国と喜んでいた住民たちは何を思うのか。では、続きを見ていく。海の無いスイスに津波が起こった。そして、その津波は世界中の市場を巻き込んでいく。
アルパリ破綻
>打撃が最も大きいとみられるのが通貨取引を扱う外国為替証拠金(FX)取引業者で、欧州を主な地盤とするアルパリが破綻した。金融庁は16日、FX取引 業者の日本法人アルパリジャパンに対し資産が流出しないよう国内保有命令を出した。 日本法人の稼働口座数は2014年6月末時点で約3千ある。
ギリシャではスイスフランの急変を受け大手金融機関が資金繰りに行き詰まり、 欧州中央銀行(ECB)に緊急融資を要請。スイスフラン建ての資産を多く保有する中欧や東欧の一部金融機関の経営を不安視する声も出ている。 <
(http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H8F_W5A110C1EA2000/)
このような急激な高騰で1番被害を受けるのは中間取引をサービスしているFX業者である。FX業者は本来はスプレッドで儲けているわけだが、一般的にレバ レッジ取引しているのはFX業者なので、スイスフラン急騰により、客の払えない損失を全て負担することになる。30%急騰すれば、追証が発生しているのは 目に見えているので、その損失は抱えきれないものだった。だから、破綻に追い込まれたわけだ。しかも、仮に追い込まれて破産なら、ロスカットが出来ない恐 れもあった。
ただ、アルパリジャパンによると、「本決定に基づき、誠に不本意ながらお客様がアルパリジャパンにて、現在お持ちのポジションを早急にすべて 強制決済させて頂くこととなりました」とある。つまり、ロスカットは出来ていたわけだ。
欧州危機が加速
>(省略)スイス周辺国のオーストリアやハンガリー、ポーランドの金融機関にも不安は飛び火しつつある。英金融大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットラン ドによるとポー ランドの住宅ローンの約4割はスイスフラン建てという。スイスフランの急騰で負債が急膨張するため返済が難しくなる。外国為替市場では15日以降、ポーラ ンドズロチやハンガリーフォリントなどの中東欧通貨が大幅安となっている。
(http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H8H_W5A110C1EA2000/)
これは日経の記事だが、ポーランドはかなりヤバい。いきなり負債が30%増えたことになる。しかも、4割がスイスフラン建てとか・・・。ポーランドの金融 機関が破綻しかねない・・・。これは、EUそのものが崩壊するかもしれない。そもそも、スイス政府が介入を止めた理由が、ユーロを支えきれなくなったこと もある。あまりにも、ユーロが駄目すぎたわけだ。
まあ、これは結果論に過ぎないが、アベノミスクで円高が急激に改善されていたのは幸運だったと思う。もし、原油安、スイスフランショックの時に、76円台 だったら、本当に50円台まで上がったかもしれない。実際、どうなったかわからないが急激な変動は大きな歪みを引き起こす。ユーロの損失は兆円単位だと思 われる。
今週の韓国市場
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
12日 1926.95 1081.40 574.76 246.50 -853億
13日 1917.14 1083.50 571.00 247.45 -537億
14日 1913.66 1082.20 574.17 246.15 -1838億←スムージングオペレーション(微細調整)を継続
15日 1914.14 1083.30 581.39 247.30 -2114億
16日 1888.13 1077.30 577.41 243.30 -3087億←スイスフラン急騰
今週の予想レートは1090~1110だった。全く予想と外れウォン高になってしまったのだが、韓国の為替レートは1050~1100の間なので、それほ ど1070ウォン台になったとしても慌てる段階ではない。ただ、来週の市場も混乱すると予想されるので、このままウォン高が一度に進むとも考えにくい。金 利引き下げはなさそうだが、様子見というところだ。
来週の予想レートは1070~1090にしておく。
さて、来週だが、引き続きスイスフランの影響を見ていく必要はあるかもしれない。混乱が一時的なものか、それとも長期的な世界経済不況をもたらすかの市場の判断がまったくつかないためである。基礎的体力がない韓国にとっては死活問題になる恐れもある。
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