第338回「南北首脳会談で行われた平壌共同宣言は米国や国際社会に同意もなしで勝手に約束」

第338回「南北首脳会談で行われた平壌共同宣言は米国や国際社会に同意もなしで勝手に約束」

■バックナンバー宣伝文

最後は非核化について。北朝鮮のやっている実験施設の廃棄なんてただのパフォーマンスである。そもそも実験施設がいくつもあるし、それは当然、米国に知られてないものもあるだろう。そもそも非核化に何ら関係はない。実験データなんていくらでも複製可能だし、技術者もいれば研究もできる。それなのに米国に制裁を解除せよと迫るわけだ。米国もさすがにこの程度で制裁解除する意思はなく、完全非核化の後だと述べている。

配信日:2018年10月7日

最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)

日本の底力→http://kankokukeizai.kill.jp/wordpress/

韓国経済危機&崩壊特集→ https://kankokukeizai.com/

今週のメルマガは韓国の文在寅大統領が平壌に出かけて行ったとされる南北首脳会談について。中々、突っ込みがいがある内容となっている。それではまずは、平壌共同宣言の全文を読んで欲しい。

【ソウル時事】韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が19日署名した「9月平壌共同宣言」の全文は次の通り(韓国側発表に基づく)。

 大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は2018年9月18日から20日まで平壌で南北首脳会談を行った。

 両首脳は歴史的な板門店宣言以降、南北当局間の緊密な対話と意思疎通、多方面にわたる民間交流と協力が進み、軍事的緊張緩和のための画期的な措置が取られるなど、立派な成果があったと評価した。

 両首脳は民族自主と民族自決の原則を再確認し、南北関係を民族的和解と協力、確固とした平和と共同繁栄に向け、一貫して持続的に発展させていくことにし、現在の南北関係発展を統一へとつなげることを願う全同胞の志向と念願を政策として実現するため、努力していくことにした。

 両首脳は板門店宣言を徹底して履行し、南北関係を新たな高い段階に進展させていくための全般的問題と実践的対策を虚心坦懐(たんかい)に深く論議し、今回の平壌首脳会談が重要な歴史的転機となるという認識を共にし、次のように宣言した。

 1、南北は非武装地帯をはじめとする対峙(たいじ)地域での軍事的敵対関係の終息を、朝鮮半島全地域の実質的な戦争の危険除去と根本的な敵対関係解消につなげていくことにした。

 (1)南北は今回の平壌首脳会談を契機に締結した「板門店宣言軍事分野履行合意書」を平壌共同宣言の付属合意書として採択し、これを徹底して順守し、誠実に履行し、朝鮮半島を恒久的な平和地帯とするための実践的措置を積極的に取っていくことにした。

 (2)南北は南北軍事共同委員会を早期に稼働させ、軍事分野合意書の履行実態を点検し、偶発的武力衝突を防止するため、常時、意思疎通と緊密な協議を進めることにした。

 2、南北は互恵と公利共栄の土台に基づき、交流と協力をさらに増大させ、民族経済を均衡ある形で発展させるための実質的な対策を検討していくことにした。

 (1)南北は今年中に、東海線、西海線の鉄道および道路連結のための着工式を行うことにした。

 (2)南北は条件が整い次第、開城工業団地と金剛山観光事業をまず正常化し、西海経済共同特区および東海観光共同特区を造成する問題を協議していくことにした。

 (3)南北は自然生態系の保護および復元のための南北環境協力を積極推進することにし、優先的に現在進行中の山林分野協力の実践的成果のために努力することにした。

 (4)南北は伝染性疾病の流入および拡散防止のための緊急措置をはじめ、防疫および保健・医療分野の協力を強化していくことにした。

 3、南北は離散家族問題を根本的に解決するための人道的協力をさらに強化していくことにした。

 (1)南北は金剛山地域の離散家族常設面会所を早期に開所することにし、このための面会所施設を速やかに復旧することにした。

 (2)南北は赤十字会談を通じ、離散家族の画像による面会と映像による手紙交換問題を優先的に解決することにした。

 4、南北は和解と団結の雰囲気を高め、わが民族の気概を内外に誇示するため、多様な分野の協力と交流を積極推進することにした。

 (1)南北は文化および芸術分野の交流をさらに増進させていくことにし、優先的に10月中に平壌芸術団のソウル公演を進めることにした。

 (2)南北は2020年夏季五輪をはじめとする国際競技に共同で積極的に出場し、32年夏季五輪の共同開催を誘致することで協力することにした。

 (3)南北は10・4宣言(07年の南北平和宣言)11周年を意義深く記念する行事を開催し、3・1運動100周年を南北共同で記念し、このための実務的な方策を協議していくことにした。

 5、南北は朝鮮半島を核兵器と核脅威がない平和の地にしなければならず、このために必要な実質的な進展を速やかに実現しなければならないということで認識を共にした。

 (1)北朝鮮はまず、東倉里のエンジン試験場とミサイル発射台を関係国専門家の立ち会いの下に永久に廃棄することにした。

 (2)北朝鮮は米国が6・12朝米共同声明の精神に沿い、相応の措置を取れば、寧辺の核施設の永久的廃棄などの追加措置を引き続き講じる用意があると表明した。

 (3)南北は朝鮮半島の完全な非核化を推進していく過程で緊密に協力していくことにした。

 6、金委員長は文大統領の招請により、近くソウルを訪問することにした。

2018年9月19日

大韓民国大統領 文在寅

朝鮮民主主義人民共和国国務委員長 金正恩。

(https://www.jiji.com/jc/article?k=2018091901061&g=prk)

これが平壌共同宣言である。全文掲載したのはこの平壌共同宣言を読んで欲しかったというのがある。ここに書かれてあることを韓国は実際、やっていくわけである。それで全部見ていくのは膨大なのでいくつか気になるところに触れていく。

■南北は非武装地帯をはじめとする対峙地域での軍事的敵対関係の終息

まず、この南北は非武装中立地帯とはじめとする対峙地域での軍事的敵対関係の終息というのは中止されている、米韓合同軍事演習の永遠に休止になるのではないか。この地域は朝鮮半島全体だと解釈できるので、米韓合同軍事演習は北朝鮮への牽制のために毎年、行ってきたわけだ。米朝首脳会談でトランプ大統領は米韓合同軍事演習の中止を決めたが、これが今後、行われないとなると米韓の連携が保てなくなる怖れがある。

しかも、韓国側が約束したのだから、韓国が米韓合同軍事演習を要求することもできなくなった。軍事演習がなくなるのは平和に近づいたという考えもあるかもしれないが、北朝鮮のように何度も約束を平気で破ってきた連中の合意なんて縛るのは韓国側のみだろう。もっとも、韓国も日本との日韓慰安婦合意の履行をしないまま放置しているので、このような平壌共同宣言はどちらにとってもたいした問題ではないかもしれない。

■南北は今年中に、東海線、西海線の鉄道および道路連結のための着工式を行う

次に気になったのが「南北は今年中に、東海線、西海線の鉄道および道路連結のための着工式を行う」というもの。文字通り、韓国と北朝鮮を鉄道や道路で行き来を可能にするわけだが、これは陸路で北朝鮮に物資を密輸する安易なルートを造るようなものである。韓国が平壌共同宣言以外にどれだけ裏支援を決めているかは知らないが、それらに利用される怖れもある。

そもそも、国連安全保障理事会の制裁決議違反の可能性が高い。もちろん、米国の合意を取っているわけではない。韓国が勝手に約束してきたことである。このような鉄道や道路などの南北ルート造りは経済協力という範囲だけでは済まない。逆に言えばそのルートを使って北朝鮮軍が韓国を攻めることだって可能だ。そんなことは100も承知だと思うが、文在寅大統領は宣言したわけだ。とても敵対国家とするものではない。

■南北は条件が整い次第、開城工業団地と金剛山観光事業をまず正常化

次に、南北は条件が整い次第、開城工業団地と金剛山観光事業をまず正常化というのは南北でのやりとりで良く出てくるが、当然、これも米国が許すはずもない。そもそも開業工業団地から得た金が北朝鮮のミサイル資金源となっていた。それを中止させたのが朴槿恵前大統領なのだが、既に遅かった。

北はウクライナかロシアか知らないが、それらからミサイルの設計図を購入してミサイル開発を行ってきた。つまり、このような北朝鮮に外貨獲得手段を与えるのは時期尚早であるが、それらの正常化交渉も始めると。まだ、完全非核化に遠い及ばない状況でだ。

■北朝鮮は米国が6・12朝米共同声明の精神に沿い、相応の措置を取れば、寧辺の核施設の永久的廃棄などの追加措置を引き続き講じる用意があると表明

最後は非核化について。北朝鮮のやっている実験施設の廃棄なんてただのパフォーマンスである。そもそも実験施設がいくつもあるし、それは当然、米国に知られてないものもあるだろう。そもそも非核化に何ら関係はない。実験データなんていくらでも複製可能だし、技術者もいれば研究もできる。それなのに米国に制裁を解除せよと迫るわけだ。米国もさすがにこの程度で制裁解除する意思はなく、完全非核化の後だと述べている。

以上、このように平壌共同宣言を見ればわかる通り、たいして注目するべき内容ではない。また、米国や国連などの制裁決議に違反しているかもしれない内容も含まれている。しかし、文在寅大統領の支持率は6%もあがって、59%になったようだ。韓国の庶民はこの宣言のどこが気に入ったかは知らないが。全文、読んでない韓国人がほとんどだろうな。

■今週の韓国市場

日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン〕

17日 2302.71 1126.60 828.88 295.18 1709億

18日 2308.98 1123.20 831.84 296.10 -110億

19日 2308.46 1121.10 826.91 296.64 802億

20日 2323.45 1120.40 821.13 299.04 3109億←キム・ドンヨン”過剰流動性不動産に影響…金利は金融統委が決定”

21日 2339.17 1115.30 827.88 300.81 420億

今週の韓国市場はわりと順調だったと思われる。結果的にKOSPIが上がり、ウォンもあがっている。ただ、少し触れてあるが、不動産価格の高騰に韓国政府が規制を入れるかもしれない。不動産価格は家計債務の増加と密接に繋がっているので、この動きにはわりと注目している。ただ、今のところはまだ検討段階で具体的な処置が出たわけではない。様子見だろう。

以上。次回は米中貿易戦争で被害が広がる韓国経済を特集していく。気が付くと米中貿易戦争は規模も拡大して長期化である。どちらも一歩も引かないまま関税爆弾が発動していく。そして、韓国経済は嫌でもその荒波に飲み込まれてしまう。

0 0 vote
Article Rating
Subscribe
Notify of
guest
0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments