第354回「韓国産の自動車生産台数低下と労働貴族による韓国自動車危機」
■バックナンバー宣伝文
つまり、ゴーン氏がいなくなった今、韓国撤退も見えてきたことになる。しかも、ルノー・サムスンにも「労働貴族」が昨年の下半期から出現した。出現した?という言葉に違和感を覚えるかも知れないが、実は2015年~2017年には3年連続ストライキなしで賃金交渉を終えていた。つまり、ルノー・サムスンは生まれ変わったのだ。もっとも、経営者にとっては福の神から貧乏神に生まれ変わったという。
配信日:2019年2月10日
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今回のメルマガは日本の徴用工問題について特集しようと思っていたのだが、8日の回答期限が過ぎても動きがなかったので、今週中に何か動くことを期待して、先に韓国の自動車危機について取り上げて行く。まず、韓国の自動車生産台数の低下から見ていこう。
■自動車生産台数はメキシコに抜かれて世界7位に
今回のメルマガは徴用工問題の動きをギリギリ待っていたので日曜日に記事を書いている。なので、日曜日までまとめた韓国自動車の最新情報を伝えていく。
2月10日、韓国自動車産業協会が発表した『2018年10大自動車生産国現況』によると、2018年の韓国の自動車生産台数は402万9000台となった。これは2017年により、2.1%減少したという。さらにメキシコの生産台数が411万台となり、韓国がワンランク落として世界7位となったようだ。その結果、グローバル完成車の生産で韓国車が占める割合も4.1%となり、韓国自動車危機はますます現実味を帯びていくことになった。
生産台数が減少した理由を韓国自動車産業協会(KAMA)によると、国内完成車生産の高コスト・低効率構造が定着して生産部門の競争力を失われたという。さらに、昨年2月に起きた韓国GM群山(クンサン)工場の閉鎖も構造的な問題で始まった結果という。
■ルノー・サムスンの労働組合が豹変
さて、ここで韓国GMが出てきたが、今年、注目なのは韓国GMだけではなく、フランスのルノー・サムスンである。ルノーといえば。日産のゴーン氏が逮捕されたことで日本中で話題になったが、実はこのゴーン氏が韓国のルノーの生産に大きな影響力を行使していたようで、特に日産の小型スポーツ用多目的車(SUV)ローグは「ゴーンの贈り物」とまで韓国自動車業界に言われていた。
しかし、そのローグの受託生産の契約は今年の9月に終了する。つまり、ゴーン氏がいなくなった今、韓国撤退も見えてきたことになる。
しかも、ルノー・サムスンにも「労働貴族」が昨年の下半期から出現した。
出現した?という言葉に違和感を覚えるかも知れないが、実は2015年~2017年には3年連続ストライキなしで賃金交渉を終えていた。つまり、ルノー・サムスンは生まれ変わったのだ。もっとも、経営者にとっては福の神から貧乏神に生まれ変わったという。
一体、昨年になにがあったのか。10月ぐらいから急に基本給を大幅に引き上げろと主張し、ストライキを行うようになる。そして、昨年12月に新しい労組委員長のパク・ジョンギュ氏が就任してますます酷くなっていく。しかも、パク委員長は就任直後、ルノーサムスン労組を「民主労組」に加入させると公言していた。災凶の現代自動車労組より少しはましかもしれないが、かなり厄介な存在と生まれ変わった。
企業が苦しんでいても、毎回、ストを起こして生産台数を減らしたあげく、給料は日本の同様の工場より賃金は20%ほど高くなった。しかも、驚くことなかれ。昨年の10月から2月7日まで28回もストライキを行ったのだ。累積ストライキ時間は104時間。これで「5000台程度」の生産支障が発生したという。
ルノーサムスンの1カ月生産量(2万台余り)の25%にもなるという。つまり、彼らは1ヶ月の4分の1の仕事もしないで、ストライキに明け暮れた。さらに、今年の1月からストライキの時間も増えているという。このような中、労働組合は基本給大幅引き上げを要求している。
しかし、このままいけばローグの次期生産台数配分交渉に大きな支障が出るのは確実。そして、とうとうルノーのロス・モザス製造総括副会長が「ルノーサムスンの労組がストを続けるなら、今後の製造台数の割り当てについて議論するのは難しい」と警告したのだ。
このようにルノー・サムスンが労働貴族に生まれ変わって、もはや、ルノーが撤退する可能性も出てきた。なら、他はどうなのかというと、現代・起亜自動車もストライキ危機に直面している。
そもそも、何でこんな面倒なことになっているのかを掘り下げていくと、どうやら、ほとんどの国内自動車企業は団体協約規定のため、工場別に生産量を調整する時も労働組合の同意を受けなければいけないそうだ。つまり、韓国に進出すれば生産台数を決めるにも労働組合の許可がいるわけだ。これでは生産性があがるわけないと。
韓国内の生産台数は減少していき、韓国自動車販売台数そのものも現代が辛うじてグローバル5位を死守したものの年々、減少している状態。それなのに労働貴族が大きく企業の足を引っ張ることで、韓国自動車危機は確実に進行している。しかも、そのとばっちりを最初に受けるのは労働貴族ではない。
■労働貴族を支える下請け(自動車部品会社)の連鎖倒産危機
韓国の自動車部品会社、つまり、下請けということになる。彼らはこのまま行けば連鎖倒産の恐怖を感じているという。ストライキで工場が稼働しない。生産台数の低下は自動車部品会社に大きく影響する。管理人が「労働貴族」と呼んでいるのはそういうことだ。
でも、貴族ならノブレス・オブリージュ(選ばれし者の責務)があるのだ。これは、高い地位にある者は、高い徳を備え、重い責務を果たす必要があるという考えだが、韓国の労働貴族は自分たちの利益に追求するだけで会社は愚か、下請けなど顧みない。会社が倒産しかけてどこかの支援を受けるにしても、自分たちの雇用が1番重要である。そして、またその支援も食い潰していくという。これは別に自動車関連だけではなく造船などでも最近、見られたわけだ。
だから、日本企業に限らず、外資は韓国に進出するのは止めた方がいいということになる。このような先例がたくさんあるからだ。
■今週の韓国市場
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
04日 旧正月で休場
05日 休場
06日 休場
07日 2203.42 1124.10 728.79 285.65
08日 2177.05 1123.90 728.73 281.49 -2778億
今週は旧正月で市場の3日間お休みだった。それで市場あけてから、08日には2200あったKOSPIが2177と転落している。これは米中貿易交渉難航という予測に外国人が投げ売りしたようだ。
実際、トランプ大統領が述べた一般教書演説でも、中国が知的財産を盗んできたと指摘しており、米朝交渉が難航することを滲ませている。そもそも、3月1日に関税引き上げ期限なのに、米中首脳会談がいつ行われるかすら決まっていない。先に米朝首脳会談が27日、28日にベトナムで開催される。
その反面、米中貿易赤字は関税引き上げ前に駆け込みで増やした結果、過去最高の3823億ドル(約42兆円)の対中赤字となっている。米中交渉の行方に投資家が注目するのも致し方ないところだ。そして、危険だと判断されたら中国と韓国株は売られていく。
以上、今週はこれで終わる。次回こそ、徴用工問題についての動きがあると思われるので、そちらを見ていくつもりだ。どのみち3月1日まで時間はない。何らかの動きがなければ新日鉄が持っていた株が売られてしまう。