第228回「韓国政府、造船・海運など5業種のみ構造調整対象とする。深刻な造船危機にどこまで対応できるのか」
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既に昨年から大幅な赤字になっている大宇造船などでは今までの自主的な企業改革を点検する。そもそも、13000人もいるのだ。それを3000人減らすということは社員を2割~3割カットするということ。でも、今の受注を見れば1万人でも多い。だが、希望退職でも韓国経済そのものが危機的な状況の中、率先しても仕事にありつけるわけでもない。
配信日:2016年4月24日
最新情報は→2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)
韓国経済、今週のメルマガは韓国政府が行う構造調整について。そもそも、構造調整というのは何かという話から、結局、それをやることで韓国の企業がどうなっていくかを解説していきたい。もっとも、構造調整というのは言うなれば、韓国政府が業種内部にメスを入れて、改革を断行させること。そして、その見返りに銀行からの多額な支援を提供するといったもの。結局は、産業が壊滅的な危機なので税金で助けようという大まかに解釈してもらって構わない。では、記事のチャートを張る。
■記事のチャート
構造調整の対象業種→構造調整で何が変わる?→今週の韓国市場
■構造調整の対象業種
韓国金融委員会(以下、金融委)は19日、造船・海運・建設・鉄鋼・石油化学業種以外で構 造調整議論が必要な業種は現在のところないと明らかにした。金融委は昨年10~11月に金融委員長が主宰して該当部署次官が参加する「産業競争力の強化お よび構造調整協議体」を2回開催し、5つの業種における構造調整の原則と供給過剰解消方案を発表した。
(http://japanese.joins.com/article/726/214726.html?servcode=300§code=300)
まずは中央日報の記事を読んで欲しい。構造調整の対象に造船・海運・建設・鉄鋼・石油化学の5種が入っている。どれも危機的な状況のものであるのだが、実はこの業種どれも原油依存で繋がっている。これらの業種は原油価格の暴落で多大な損失を産み出した。これは石製品の輸出価格だけではなく、中東といった韓国のお得意先が原油価格暴落で大きな痛手を負ったことでの注文キャンセルなども含まれている。
原油価格の下落は本来、デメリットだけでは原材料が安くなるというメリットがある。しかし、韓国の場合、原材料が安くなっても、他の国も同じように価格を下げてくることで、デメリットが消失してしまった。それとウォン安である。ウォン安は原材料を高くする。原油価格が下がっても,ウォン安となれば原材料価格は上がる。
なんともまあ、ややこしい展開であるが、どちらの比重が大きいかである。明らかに一時的なウォン安よりは、原油安の方が響くわけだ。逆にサムスン電子、LG電子などはウォン安で儲けている。これはDRAM分野の原材料価格が元々,安いからだ。しかし、上の5種は大型生産が基本である。原材料価格の高騰となれば厳しい。その前に造船は受注すら激減しているが。さて、では構造調整がどのように行われるのか説明していく。
■構造調整で何が変わる?
構造調整というのは基本的にリストラである。リストラというのは企業の再構築を意味する。そして、そのために業種そのもののスリム化が目的。ここには人員削減。これが人材の構造調整。そして、組織編成。組織の構造調整も行う。いくつもの企業組織があれば担当の部署が重複していることも色々ある、ここらを整理、移転、再編することで企業の組織系統の大幅な見直しが行われる。
これらは経営者が行うことであるが、政府が構造調整に乗り出すなら、当然、報告義務が生じてくる。現代重工業といったビッグ3が造船業種を再編していく動きが出ている。そして、現代重工業・大宇造船などでは3000人ずつリストラが避けられないという。とにかく人材と組織を再編成して、業種をスリム化していくことで支出や負債など、これから出て行く出費を減らしていく。また、それらをするには銀行の多額の支援が不可欠。韓国の造船業種は大規模な構造調整となっているので、政府が乗り出して、銀行の支援も取り付けるといった感じだ。また、これらの構造調整が進んでいるかも,毎回、政府に報告して監査を受けることになる。
既に昨年から大幅な赤字になっている大宇造船などでは今までの自主的な企業改革を点検する。そもそも、13000人もいるのだ。それを3000人減らすということは社員を2割~3割カットするということ。でも、今の受注を見れば1万人でも多い。だが、希望退職でも韓国経済そのものが危機的な状況の中、率先しても仕事にありつけるわけでもない。
しかも、そのリストラされた労働者の3000人が飲食店などに落とすお金も減少するので、韓国の内需から見ても良くないことになる。大幅なリストラがセウォル号沈没、韓国MERSからようやく戻って来た内需を壊滅的に減少させることに繋がる気もしないでもない。だが、会社が破産してはもっと多くの失業者であふれかえる。
苦肉の策といったところであるが、問題は今の韓国政府に巨大な造船業種の構造改革ができるかである。与党が惨敗して、野党が国会運営を仕切る有様。このようなときにどこまで対象の法案を通せるのか。さすがに表立って反対はないとは思いたいが、韓国人のやることだ。斜め上はどこからともなく迫ってくる。
以上が構造調整である。本格的にヤバい造船の構造調整が上手くいくのか。惨敗した与党に対する風当たりは相当強い。例えば、朴槿恵政権の支持率は29%に転落している。面白いのは選挙で負けたから支持率が大幅に下がっているところ。どれだけ浮動票が多いのかがよくわかる。
■今週の韓国市場
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
18日 2009.41 1150.20 695.34 248.35 2000億
19日 2011.36 1136.30 701.68 248.90 286億
20日 2005.83 1135.20 699.86 247.95 1037億
21日 2022.10 1132.90 701.62 249.90 1565億
22日 2015.49 1143.10 703.05 248.70 1504億
今週の韓国市場は1150ウォンよりはウォン高となっている。ただ、この辺りは行ったり来たりすると予想しているので、今のところどちらに転んでいくことになるかは判断が難しい。そもそも、日本では熊本地震のニュース関連が大半を占めているので、中々,正確な世界の経済状況といったものを掴みにくい。1つだけいえるのはKOSPI2000台は重要で、これより上の場合は韓国経済は上向きになっていると見て良い。今はぎりぎりラインなので上向いたかは微妙だが、外国人が地震直後からずっと買いに走っているのを見ると、韓国有利と見ているのだろう。
以上。今週はこれで終わる。次回は数人の読者様から熊本地震の韓国報道や経済的な影響について特集してほしいというリクエストを頂いているのでこちらを見ていく。ただ、熊本地震で韓国有利となるかは管理人もよくわかっていない。もちろん、熊本に部品生産工場が多数あるので、日本の部品産業が世界の生産品に悪い影響を与えるのは必至だ。だが、それによって韓国が有利かというとまだまだ疑問なのだ。まあ、1週間あるので状況を整理したいと思う。