第330回「日本より最低賃金が高くなった韓国だが、雇用は過去最悪となる」
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そして、2018年はトランプ大統領という台風が韓国経済を強襲した。米韓FTA再交渉、鉄鋼・アルミニウムへの関税、米中貿易戦争と、まさに韓国にとっては吹き荒れる嵐の中、耐えるしかないという。だが、文在寅大統領はその風に立ち向かうとばかりに、最低賃金引き上げを10%ほど行った。さらに週52時間と働く時間を制限する働き方改革もスタートした。ただ、最低賃金の大幅引き上げがどのような結果になるかなんて火を見るより明らかである。愚策をさらに重ねると。
配信日:2018年7月22日
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今週の韓国経済は韓国の最低賃金引き上げについてである。2017年5月、文在寅大統領は2020年までの最低賃金の公約1万ウォンを掲げて選挙で当選した。そして、その公約を守るために最低賃金を2018年は16%ほど上げて7530ウォンに上昇させた。
この時も製造業や零細企業からかなりの反発があったのだが、文在寅大統領は高い支持率に後押しされて最低賃金引き上げを実行した。それから1年、最低賃金引き上げの効果は出た。雇用が「減少」したのだ。ええ?それって効果が出たんじゃなくて、むしろ、逆効果ではと思うかもしれない。はっきり述べておくと、誰もが予想した通りになったのならそれは効果が出たである。なぜなら、最低賃金を一度に16%も引き上げたら、企業が対応できるはずないからである。ちなみに日本円で直すときは1桁取って頂きたい。つまり、10000ウォンは1000円ぐらいになる。
こういうのは「目に見える地雷」とか管理人は述べていたが、最低賃金引き上げそのものは別に悪くない経済政策だったのだ。問題はその引き上げ金額と公約そのものが韓国経済が耐えられる水準ではないということだ。どういうことなのか。文在寅大統領は、2020年に最低賃金を引き上げて10000ウォンを超えることが目的としていた。だから、文在寅大統領の思惑はこうなる。
2017年は16.2%あげて7530ウォン。残り、2470ウォンなので単純に考えたら、2018年にさらに16%、2019年にさらに16%でだいたい1万ウォンになる。つまり、この最低賃金引き上げは3年で50%近くあげないと達成できない数値だったのだ。この時点で机上の空論であるのだが、それを実行するのが文在寅大統領であった。
しかし、1年に16%あげただけで企業は悲鳴を上げて、雇用は減少、機械化が促進される結果となった。韓国メディアのほとんどが最低賃金引き上げの影響で雇用悪化と書き立てた。ちなみにこれに伴い韓国政府は3000億円を使って零細企業支援をしているのだが、たかが3000億円で穴埋めができるわけもないという。
なら、ここで文在寅大統領は最低賃金引き上げを止めるかと思えば、さらに、10%上昇させて、2019年は8350ウォンとなった。これが先週の動きである。そして、コンビニや飲食店などの個人営業や零細企業から猛反発を食らっていると。しかし、2020年にまで最低賃金1万ウォン達成は諦めたようで、おそらく任期まで達成しようと動いている。これなら、2020年、2021年に825ウォンずつあげれば最低賃金1万ウォンに達成可能だ。計算上は。
しかし、16%アップの7350ウォンで苦しいと述べていた飲食店やコンビニが、さらに10%アップに耐えることができるわけもない。なら、どうするか。当然、商品の値上げである。朝鮮ビーズによると、韓国外食産業研究院が昨年3月に外食店300社を調査した結果によると、応答業者の24.2%が最低賃金引き上げに応じて食品の値を上げたと答えた。 また、外食産業の78.6%は、今後のメニューの価格を引き上げる計画だという。つまり、物価の高騰は避けられない。インフレ待ったなしと。だが、韓国の場合はメルマガでも指摘した通り、これから景気は好調から不況に向かうので、実際はスタグフレーションである。
さらに、韓国は米国が金利を上げているのに韓国は金利を上げることができないのだ。あげられない理由は負債の増加もあるが、景気が悪いところに金利を上げたら、さらに投資が落ち込んでしまうためでもある。実際、今の韓国経済の指標は酷い有様である。どれぐらい酷いか例を中央日報から出そう。
>景気下降に対する懸念がいつになく大きい。統計庁がこのほど発表した5月の景気循環時計を見ると、生産・消費・投資・雇用など10大経済指標のうち9項目で「鈍化」または「下降」を示した。就業者数と設備投資指数、企業景況指数、建設既成額などが代表的だ。景気転換点を判断する基準である同行指数循環変動値は1年前をピークに下がり続けている。
(http://japanese.joins.com/article/216/243216.html?servcode=300)
なんと10大経済指標で10項目のうち9項目で景気が悪化しているという数値が出ているのだ。2017年は米国経済が好調で、原油価格の高騰もあり、韓国経済にとってはまさにボーナスステージとなって、3.1%という高い成長率となった。サムスン電子の株価が1年で2倍になったことを考えれば、韓国に追い風が吹いていた。だが、その風を文在寅大統領は止めてしまった。
そして、2018年はトランプ大統領という台風が韓国経済を強襲した。米韓FTA再交渉、鉄鋼・アルミニウムへの関税、米中貿易戦争と、まさに韓国にとっては吹き荒れる嵐の中、耐えるしかないという。だが、文在寅大統領はその風に立ち向かうとばかりに、最低賃金引き上げを10%ほど行った。さらに週52時間と働く時間を制限する働き方改革もスタートした。ただ、最低賃金の大幅引き上げがどのような結果になるかなんて火を見るより明らかである。愚策をさらに重ねると。
だから、韓国経済が悪化するのは「これから」である。最近、悪いニュースばかりが多いのだが、数値的にはそこまで酷くはない。今年の成長予想も3.0%から2.9%に引き下げられたぐらいだ。しかし、確実に悪化することは予想されるので、今後も注目して頂きたい。
■今週の韓国市場
日付 KOSPI ウォン KOSDAQ 先物 外国人(ウォン)
16日 2301.99 1129,20 825.71 297.37 -455億
17日 2297.92 1124.10 819.72 296.88 -1387億←コスピ、取り引き不振の中2,300線離脱…外国人’売り’持続
18日 2290.11 1132.30 810.49 296.47 912億
19日 2282.79 1133.20 796.49 295.90 532億
20日 2289.19 1133.70 791.61 296.95 -1215億
今週の韓国市場は外国人の売りが目立ち、KOSPIが2300を割れている。ウォンも1133とウォン安となっているのだが、韓国の為替レート範囲で有利な1100~1150からは逸脱してないので輸出には有利といえる。世界の為替レートはトランプ大統領のTwitter発言で大騒ぎなのだが、中々、どうなるかは予想できない。米中貿易戦争も長期化する可能性も出てきており、その金額も最大で5000億ドルとかいわれている。内外で韓国経済が取り巻く状況は悪化の一途といっていい。
以上。今週はこれで終わる。来週の予定だが、最近、韓国政府を相手取り、外国企業がISD訴訟を起こしている。そして、1件目の結果が出て韓国政府は負けたのだが、ISD訴訟といえばローンスター社が起こしたものの規模が大きい。これらのISD訴訟の現状を見ていく予定だ。